Pros & Cons 細菌性髄膜炎患者へのステロイド薬の適応


急性細菌性髄膜炎に罹患した成人,とくに肺炎球菌性髄膜炎を有する成人における死亡率と障害の罹患率は高い.動物での細菌性髄膜炎の研究では,コルチコステロイド剤を用いた補助療法が有益な効果を示している.


性髄膜炎への投与も勧められていない(推奨度3)。髄膜炎菌およびHibによる髄膜炎 ..

急性細菌性髄膜炎の成人を対象に,デキサメタゾンによる補助療法とプラセボを比較した,前向きの無作為二重盲検多施設共同試験を実施した.デキサメタゾン(10 mg)またはプラセボを抗菌剤の初回投与の 15~20 分前あるいは抗菌剤の初回投与と同時に投与し,その後 6 時間ごとに 4 日間投与した.主要転帰の指標は,8 週での Glasgow Outcome Scale であった(5 点は良好な転帰を示し,1~4 点は転帰が不良であることを示す).また,原因菌に基づいたサブグループ解析も行った.分析は intention-to-treat 解析法を用いて行った.

細菌性髄膜炎に罹患した成人全例が,デキサメタゾンによる補助療法から利益を得るかどうかは不明である.

初期研修医〜一般内科向けに作成したスライドです。髄膜炎菌の部分は曝露後予防など少し踏み込んでいるので、興味があれば。

合計 301 例の患者を,157 例はデキサメタゾン治療群に,144 例はプラセボ群に無作為に割付けた.ベースライン時における両群の特性は同等であった.デキサメタゾン療法は,不良な転帰のリスクの減少と関連していた(相対リスク 0.59;95%信頼区間 0.37~0.94;P=0.03).また,デキサメタゾン療法は,死亡率の減少とも関連していた(死亡の相対リスク 0.48;95%信頼区間 0.24~0.96;P=0.04).肺炎球菌性髄膜炎患者において転帰が不良であったのは,デキサメタゾン群では 26%であったのに対し,プラセボ群では 52%であった(相対リスク 0.50;95%信頼区間 0.30~0.83;P=0.006).消化管出血は,デキサメタゾン群の 2 例およびプラセボ群の 5 例で発生した.

細菌性髄膜炎の患者に補助的療法としてステロイドを投与するかどうかを決定する必要がある臨床医にとって、今回のこの知見が暗示しているものは一体何なのか?われわれは、医療をより受けやすい収入の高い 国々の細菌性髄膜炎患者の試験において一貫して示されているステロイドのベネフィットから考えると、そのような状況ではステロイドを使用するのが当然であると確信している。また、ステロイドの有害事象は全ての試験において、ほとんど認められていない。疾患やHIV 感染の認識の遅れがステロイドのベネフィットを妨げている収入がより低い国々では、有効な抗生物質が投薬されるような状況を改善するための試みが必要である。しかしながら、30 年以上にわたる努力と議論から明らかにされる一つの最も重要なテーマは、ステロイドによる補助的療法は世界的に、特に細菌性髄膜炎に関連した罹病率や死亡率の割合が異常に高い、医療が十分に行き届いていない地域では、細菌性髄膜炎の公衆衛生上の負担に対して大きなインパクトは与えないのではないかという点である。この点から、研究者、臨床医、製薬会社、公衆衛生当局、財団および政府機関は世界的に、有効な結合ワクチンをより容易に購入でき、より簡単に接種できるよう努力する必要がある。

細菌性髄膜炎の初期対応と重要性. #1. 細菌性髄膜炎ERでの初期対応 デキレジは“こう動く”. #2.

デキサメタゾンを用いた早期治療は,急性細菌性髄膜炎を有する成人の転帰を改善し,消化管出血のリスクを増大させない.

細菌性髄膜炎が疑われる 14 歳以上の患者 435 例を対象に,デキサメタゾンに関する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した.試験の目的は,1 ヵ月の時点の死亡リスクと,6 ヵ月の時点の死亡あるいは身体障害のリスクが,デキサメタゾンによって低下するかどうかを明らかにすることであった.

[PDF] 抗菌薬選択に難渋した Listeria monocytogenes 髄膜炎の 1 例

化膿性髄膜炎のうち、髄膜炎菌を起炎菌とするものを髄膜炎菌性髄膜炎という。髄膜炎を起こす病原性細菌はいくつか知られているが、大規模な流行性の髄膜炎の起炎菌は髄膜炎菌のみであることから、流行性髄膜炎ともよばれる。

この新たに実施されたメタアナリシスには、5 つの個々の試験の方法論的な厳密さ、個々の被験者データの利用、臨床的に関連した転帰、ならびに事前に特定したサブグループといった、いくつかの強みがあった。この解析の主な限界は、個々の試験間の不均一性(何らかの不均一性を示したものを含む)を検証する既報の検定法が、収集されたデータによって制限されたことであった。すなわち第1 には、マラウィで実施された試験でさえ、全ての患者に対してHIV 検査が行われたわけではなく、また地域の疫学パターンに基づいて患者のHIV の状態が割り振られていた(検査されなかった全てのマラウィ人成人患者はHIV 陽性 であるとみなされたが、小児の場合は、HIV 検査を行わない限りは陽性・陰性の判断はしなかった)ことから、HIV の状態が及ぼす影響を検証するには限界があったという点があげられる。第2 には、感染に 対する臨床反応や有害な転帰に関連した宿主因子である栄養失調が、全ての患者で評価されていたわけではなく、また地域の有病率に基づいて分類されていた点があげられる。第3 には、患者の意識レベル(2 つの異なるスコア化システムを組み合わせて測定する)に基づいて髄膜炎の重症度を層別化しようという試みがなされたが、精神状態を評価するタイミングに関して標準化がなされなかった点があげられる。髄膜炎は進行が早い疾患であり、そのため、もし結果が一般化できるようなものである場合には、意識の臨床評価を行う正確なベースライン時点(例えば、最初のトリアージの段階で、抗生物質の投与時、あるいはステロイドまたはプラセボの投与時)を規定しておくことが重要である。第4 には、細菌性髄膜炎は通常、神経系だけでなく全身性の感染症であり、血圧や血中乳酸濃度といった他の鍵となる臨床データが、このメタアナリシスでは他の方法で検出されなかった重要な不均一性を示した可能性があるという点があげられる。


細菌性髄膜炎 Bacterial meningitis(髄膜炎菌、肺炎球菌

しかし、世界全体としては毎年30万人の患者が発生し、3万人の死亡例が出ている3)。特に、髄膜炎ベルト(meningitis belt)とよばれるアフリカ中央部において発生が多く、また先進国においても局地的な小流行が見られている。

抗菌薬選択に難渋した Listeria monocytogenes 髄膜炎の 1 例

これら2 つの試験から得られた矛盾するエビデンスは、ステロイドによる補助的療法の効果は地理的な場所によって異なるという考え方を裏づけるものであった。その新たな知見がvan de Beek らを、最新のメ タアナリシスの実施へと駆り立てた。この解析には、2001 年以降に発表された、細菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンによる補助的療法に関する二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、個々の試験における患者の生データが利用可能であった5 つの試験が含まれた。この5 つの試験は、前述のマラウィおよびベトナムで成人を対象として実施された2 試験、西部ヨーロッパで成人を対象として実施された1 試験、ならびに南アフリカおよびマラウィで小児を対象として実施された2 試験であった。全体で、計2,029 例の患者のオリジナルデータが解析された。このメタアナリシスの最も重要な結論は、デキサメタゾンは(難聴または神経学的疾患の改善の有無にかかわらず)生存率を改善しなかったというものであった。生存患者で唯一認められたベネフィットは、難聴の減少であった。事前に規定していたサブグループ、すなわち起炎菌、HIV の状態、年齢またはデキサメタゾンの前に行った抗生物質による前治療が同じであった患者についてさらに解析を実施した結果、いずれの主なサブグループにおいても、デキサメタゾンによる補助的療法のベネフィットは認められなかった。

きない状況にあり,その可能性が考えられる年齢層(乳幼児期)においてはデキサメタゾン併用

計 217 例をデキサメタゾン群に,218 例をプラセボ群に割り付けた.300 例(69.0%)で細菌性髄膜炎が確定し,123 例(28.3%)がほぼ確実例と診断され,12 例(2.8%)には別の診断が下された.患者全例を対象とした intention-to-treat 解析から,デキサメタゾンは,1 ヵ月の時点の死亡リスク(相対リスク 0.79,95%信頼区間 [CI] 0.45~1.39),および 6 ヵ月の時点の死亡あるいは身体障害のリスク(オッズ比 0.74,95% CI 0.47~1.17)の有意な低下とは関連しないことが示された.しかし,細菌性髄膜炎の確定例では,1 ヵ月の時点の死亡リスク(相対リスク 0.43,95% CI 0.20~0.94),および 6 ヵ月の時点の死亡または身体障害のリスク(オッズ比 0.56,95% CI 0.32~0.98)に有意な低下がみられた.これらの効果は,ほぼ確実例には認められなかった.多変量解析の結果から,ほぼ確実例に対するデキサメタゾン療法は,1 ヵ月の時点の死亡リスクの上昇と有意な関連があることが示された.この所見は,治療群における結核性髄膜炎症例の存在によって説明される可能性がある.

基本的には,抗菌薬の投与の 10〜20 分前に,デキサメタゾンを 0.15mg/kg・6 時間毎(体重 60kg の場合,デキサメタゾン

起 炎菌としては、アフリカではA群が圧倒的に多く、8〜12年周期で地域での起炎菌となっており、またアジア(ベトナム、ネパール、モン ゴル)、ブラジルでも流行の原因株となっている。B群はヨーロッパに最も広く認められ、C群は米国、ヨーロッパに多く見られる。1998年にはイングラン ドでC群による流行性髄膜炎が発生し、1,500人以上が発症して150人が死亡し4)、C群混合ワクチン導入のきっかけとなった(治療・予防の項参照)。2000年から2001年にかけては、メッカへの巡礼者を介したW-135群の感染例が発生し、WHOの報告によると世界で患者約400人、死亡者約80人の犠牲者を出したとされている5)。近年においては2005年1月に、1カ月間で中国・安徽省を中心に髄膜炎の感染者が続出し、患者258人、死者16人もの犠牲者が出たとされた6)。また、フィリピンでは2004年10月から2005年1月にかけて、髄膜炎菌による患者98人、死者32人7)、インドでは2005年3月下旬から5月下旬までの短期間に、髄膜炎菌による患者が368人で死者が37人も発生した8)との報告がある。
一般的に患者としては、生後6カ月から2年の幼児、及び青年が多い。
一般的に髄膜炎菌は患者のみならず、健常者の鼻咽頭からも分離され、その割合は世界では5〜20%程度とされている9)。しかし近年の研究結果から、わが国においては健康保菌者は約0.4%程度であることが明らかとなっている10)11)。わが国における低保菌率と髄膜炎菌性感染症の低発生率の関連性は非常に興味深いが、詳細は不明である。

CTRX 2g q12h, VCM 700mg q8h, ABPC 2g q4hを開始

本菌はくしゃみなどによる飛沫感染により伝播し、気道を介して血中に入り、さらには髄液にまで侵入することにより、敗血症や髄膜炎を起こす。
髄膜炎菌は莢膜多糖体の種類によって少なくとも13種類(A, B, C, D, X, Y, Z, E, W-135, H, I ,K, L)のserogroup(血清型)に分類されているが、起炎菌として分離されるものではA, B, C, Y, W-135が多く、特にA, B, Cが全体の90%以上を占める。また、菌の成育に必須の遺伝子(house keeping gene)の塩基配列の多様性を比較、解析することにより、分子レベルで分類するMLST(Multi Locus Sequence Typing)と呼ばれる方法があり、流行を起こす起炎菌は特定のグループに分類されることが推測されている12)

[PDF] 亀田1ページで読める感染症ガイドラインシリーズ 5

Cochrane レビューの著者らが予想していた通り、収入が低い国々の細菌性髄膜炎の成人患者を対象として実施された2 つの臨床試験では、矛盾した結果が示された。マラウィで実施された試験では、ステロイ ドによる補助的療法によって、罹病率または死亡率は低減しなかった。ベトナムで実施された青年および成人(年齢> 14 歳)の細菌性髄膜炎患者を対象とした試験では、全ての患者のintention-to-treat 解析の結果、ステロイドによる補助的療法によって、1 ヵ月時点での死亡リスク、6 ヵ月時点での死亡または障害のリスクは低減しなかった。微生物学的に確認された細菌性髄膜炎を有する患者のサブグループ解析(全コホートの69%)においてのみ、ステロイドによる補助的療法のベネフィットが示されたが、そのベネフィットが認められたのはグラム陽性の起炎菌を有する患者に限定されていた。ベトナムにおいて微生物学的に最も高頻度に確認される髄膜炎の起炎菌がStreptococcus suis であったことを考慮すると、この起炎菌はアジア以外の国では稀であることから、前述のサブグループにおけるベネフィットでさえも、それを一般に外挿することについては疑問が残されていた。

・治療期間は、症状、髄液所見をみながらではあるが、一般的には14日間である。経口抗菌薬に途中




気道を介してまず血中に入り、 1)菌血症(敗血症)を起こし、高熱や皮膚、粘膜における出血 斑、関節炎等の症状が現れる。引き続いて 2)髄膜炎に発展し、頭痛、吐き気、精神症状、発疹、項部硬直などの主症状を呈する。3)劇症型の場合には突然発症し、頭痛、高熱、けいれん、意識障害を 呈し、DIC(汎発性血管内凝固症候群)を伴い、ショックに陥って死に至る (Waterhouse-Friderichsen症候群)。
菌血症で症状が回復し、髄膜炎を起こさない場合もあるが、髄膜炎を起こした場合、治療を 行わないと致死率はほぼ100%に達する。抗菌薬が比較的有効に効力を発揮するので、早期に 適切な治療を施せば治癒する。

バンコマイシンを使 用する理由は,ペニシリン耐性肺炎球菌(ペニシリンの MIC 0.12 mcg/mL 以上)の治療のためである。



髄液、血液から分離培養を行い、グラム染色による検鏡及び生化学的性状により髄膜炎菌であることを確定する。血清群型別は、Wellcome社、E.Y Lab社などで販売されている型別用の 抗血清を用いて、凝集反応の有無によって検査を行う。
PCRによる髄膜炎菌の同定はいくつかの論文で報告されているが、いまのところWHOを含めた国際医療機関において統一された方法の提示はない。
また、髄液中の細菌抗原を検出する方法も行われており、ラテックス凝集法による診断キットがSlidex(Bio-Merieux社)として販売されている。ただし、このキットにはA, B, C群に対する抗体し か含まれていないので、その点に留意する必要がある。

生後3カ月以上の乳児における細菌性髄膜炎



第一選択薬はペニシリンGで ある。また、一般に髄膜炎の初期治療に用いられるセフォタキ シム(CTX)、セフトリアキソン(CTRX)、セフロキシム(CXM)は髄膜炎菌にも優れた抗菌力を発 揮するので、菌の検査結果を待たずしてCTX、CTRXをペニシリンGと併用すれば、起炎菌に対して広範囲な効果を現わし、早期治療の助けとなる。
予防としてはまずワクチンが挙げられる。現在ではA、C単独もしくはその2群、およびA、C、Y、W-135の4群混合の精製莢膜多糖体 ワクチンが使用されている。しかし、2歳以下の幼児に は最初から効果が期待できず、さらに成人に対しての効果は数年程度しか持続しないとされている。最近では、C群髄膜炎菌の莢膜多糖体を不活化ジフテリアト キシンに結合させた混合ワクチンが開発され、英国では1999年11月から、その他、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ポルトガル、 スペイン、カナダなどの先進国で認可され、現時点では最も有効なC群髄膜炎菌ワクチンとして使用されている13)。一方、B群の 精 製莢膜多糖体ワクチンは免疫惹起力が非常に弱く、ワクチンとして有効でないとされている。そこで外膜タンパクを用いたワクチンが開発、 検討されてきたが、防御効果の有無がはっきりしないため、現時点においては使用可能なB群髄 膜炎菌用のワクチンは存在しない。しかし、B群髄膜炎菌による小規模なアウトブレイクに悩まさ れ続けてきたニュージーランドでは2004年に、ニュージーランド専用に開発された外膜タンパク質ワクチン「MeNZB」を仮認可し、6週歳から19歳ま での小児に定期接種を開始した14)。わが国 において少ないながらも発生する髄膜炎菌性髄膜炎の起炎菌の半数以上はB群によるものであり、日本国内のドミナント血清群であると推測されることから、今 後のB群髄膜炎菌に対するワク チンの実績動向と開発が注目される。
わが国においては、2015年5月より髄膜炎菌(血清型A、C、Y、W)による侵襲性髄膜炎菌感染症を予防する目的の4価髄膜炎菌ワクチンが認可された。基本的には任意接種だが、指定難病である発作性夜間ヘモグロビン尿症に用いるエクリズマブ投与対象者は保険適用である。
患者と接した人々への緊急の対策としては、抗菌薬の予防投与がリファンピシンを中心に行われる。