[PDF] 腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧(2014改訂20版)
CKD やAKI ががん治療の予後に影響する理由は明確に解明されていないが,腎障害の存在により適切な抗がん薬治療が受けられていないことを示唆する報告がある。がん患者のうち,CKD 併存患者は抗がん薬治療を受けた割合が40.7%で,非併存患者における割合68.4%と比較して有意に低かったことが,日本人のステージIV の固形がん患者961 例を対象とした研究により報告されている。さらに,がん薬物療法を受けた日本人透析患者74 例の多施設調査では,透析患者に対して減量が推奨されている薬物や常用量の投与が可能であることが知られている薬物においても,症例によりその対応はさまざまであることが明らかにされており,投与量調整に対して統一された指針がないことが課題となっている。
末期腎不全患者では主に小腸の P⊖gp 機能の低下により AUC が 2.8
糸球体係蹄壁(糸球体内皮細胞,糸球体基底膜,糸球体足細胞からなる)の透過性亢進や傷害により発生する。各種糸球体腎炎の他,糖尿病性腎症,ループス腎炎,腎硬化症などさまざまな腎疾患により発生しうる。蛋白尿のSI(選択指数)はIgG とトランスフェリン(tf)のクリアランス(C)比(CIgG/Ctf)で算出され,SI ≦ 0.10 が高選択性,0.11 ≦ SI ≦ 0.20 が中程度選択性,SI ≧ 0.21 が低選択性の定義とされている。高選択性の場合にはアルブミンが,低選択性に進展するとIgG を主体とする中分子量蛋白が漏出する。
CKD の併存はがん治療における予後不良因子となることが知られている。がん患者におけるCKD の併存は全死因死亡またはがん関連死亡の独立した危険因子であることが大規模コホート研究により報告されており,がん種や病期によって死亡のハザード比が異なる。また,CKD に起因する貧血ががん患者の生存と関連することも明らかにされており,CKD の併存に加えて貧血の重症度が高くなるとともにがん患者の累積生存率は段階的に低下する。
[PDF] クレアチニンクリアランス(ml/分) 透析患者の場合
近位尿細管における再吸収障害と細胞傷害に起因する。尿細管間質性腎炎(薬剤性,アレルギー性,感染性など)がその代表である。再吸収障害によりアルブミン,そしてβ2 ミクログロブリンなどの小分子蛋白が漏出し,細胞傷害によりN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼなどの尿細管酵素の逸脱が認められる。
腫瘍随伴症候群は原発腫瘍や転移腫瘍から離れた部位に生じる宿主の臓器機能障害と定義される。主に肺がん,消化器がんなどの固形がんにおいて,腫瘍随伴症候群として膜性腎症が発症することがあり,THSD7A(トロンボスポンジン1 型ドメイン含有7A)が内因性抗原として関与するという報告もある。逆に膜性腎症患者における悪性腫瘍有病率は,欧米の患者を対象とした研究のシステマティックレビュー・メタ解析においては10%程度とされ,特に肺がん,前立腺がん,血液がん,結腸・直腸がんが多かった。一方,日本腎臓学会・腎生検レジストリの集計データにおいては,病理学的に膜性腎症と診断された813 例のうち,悪性腫瘍に起因する二次的な膜性腎症は8 例(1.0%)で,うち固形がんはわずか2 例(前立腺がん,膵がん)であった。多施設登録によるバイアスが混入している可能性も指摘されているため確定的ではないが,欧米と比較して日本人の膜性腎症では悪性腫瘍の合併率が低い。
腎障害かつ、CYP3A4阻害薬、P-gp阻害薬併用患者には禁忌
透析患者において,がん胎児性抗原(carcinoembryonic antigen: CEA),糖鎖抗原19-9(carbohydrate antigen 19-9: CA19-9),扁平上皮がん(squamous cell carcinoma: SCC)抗原,神経特異性エノラーゼ(neuron specific enolase: NSE)などの一部の腫瘍マーカーは,腎機能正常患者と比較して高値となるか,または偽陽性率が高いことが知られている, 。これらのマーカーを透析患者のがんスクリーニング検査や治療効果の指標として用いる際には,腎機能正常患者と基準値が異なることがあるため注意が必要である。一方,αフェトプロテイン(AFP),protein induced by vitamin K absence or antagonist-II(PIVKA-II),前立腺特異抗原(prostate specific antigen: PSA),糖鎖抗原125(CA125)は透析患者においても腎機能正常患者と差がないことが確認されている。
AKI の既往と発がんの関連を示唆する報告がある。この報告は台湾の公的医療保険データベースを用いた研究で,AKI を生じなかった患者を対照群とし,透析が必要なAKI を生じた後に透析から離脱した患者,離脱できずに透析を継続した患者のがんの発症率が調査された。その結果,透析から離脱した患者群と透析を継続した患者群におけるがんのSIR はそれぞれ1.21,1.31 と高値であり,がん種は透析から離脱した患者群で消化器系がん,透析を継続した患者群で泌尿器生殖器がんが多く,それぞれ異なる分布を示した。AKI の既往と発がんの関連についてはエビデンスを評価できる論文が乏しいため,今後も詳細な検討が必要である。
腎障害がある患者へのHMG‑CoA還元酵素阻害薬との併用は原則禁忌です。 図3 ..
CKD は尿異常や腎機能の低下が3 ヵ月以上継続して認められた場合に診断されるため,がん薬物療法を開始する時点では,CKD の診断が確定していない場合も想定される。腎機能低下が認められるがん患者に対しては,悪性腫瘍を契機に生じたAKI なのか,悪性腫瘍を合併するCKD またはその予備群なのかを把握し,対応を検討する必要がある。さらに,CKD またはその予備群の可能性がある患者においては,腎機能の緩やかな低下が続くことが予想されるため,腎機能の推移に応じて定期的に治療計画を見直す必要がある。また,このような患者では,貧血や高血圧などを合併していることも多く,がん種ごとの診療ガイドラインや各薬物の適正使用ガイドを参考に,安全性プロファイルも考慮に入れた適切な薬物選択や投与量調整を心掛けなければならない。
透析患者においてがんの発症率が高いか否かについては明らかにされていない。米国,欧州,オーストラリア・ニュージーランドの83 万1804 例の透析患者を対象とした大規模調査では,全がん種の発症を統合したSIR は米国で1.2,欧州で1.1,オーストラリア・ニュージーランドで1.8 と,地域により異なることを報告している。この研究は1999 年に報告されたものであり,近年の状況を反映していない可能性がある。
日本腎臓病薬物療法学会(JSNP)のホームページまたはfacebookをご覧下さい. 【CKD患者に関する薬剤情報】
一方,間接的機序による腎機能低下としては,腫瘍随伴症候群に包括される糸球体腎症が挙げられる。最も多くみられるのは,腫瘍細胞から分泌される成長因子やサイトカインにより引き起こされる膜性腎症である。特に高齢の膜性腎症発症者は悪性腫瘍を併発することが多く,主に肺がん,胃がん,前立腺がん,血液系腫瘍,大腸がん,乳がん,胃がん・食道がんなどを合併することが知られている。また,多発性骨髄腫の患者にもしばしば尿細管間質性疾患と糸球体損傷を認めることが知られており,脱水や高Ca 血症に伴う腎血流量の低下,免疫グロブリンの異常増殖による循環不全,アミロイドの沈着による糸球体結節などが原因として挙げられる。がん治療に伴う腎障害としては,各種抗がん薬( を参照)以外にも,TLS(tumor lysis syndrome),腎摘除術施行,放射線治療などが原因となる。特に,腎摘除術に関しては,根治的腎摘除術の方が部分切除術と比較してCKD ステージ4 以上となるリスクが高いことも報告されている。さらに,嘔吐による脱水やNSAID 投与による腎血流量の低下,がんスクリーニング検査のためのCT 造影剤による腎症などは,がん患者のAKI として比較的発症率が高く,注意を要する。
DIクイズ2:(A)腎機能に応じたH2ブロッカーの投与量:日経DI
日本人の透析患者における部位別のSIR は,男性では腎がんと多発性骨髄腫が全年齢で高く,肝がんと結腸がんが40~64 歳で高いという特徴を有する。女性では子宮がんのSIR が全年齢で高いことが知られている。一方,透析患者におけるがんの好発部位は国によって異なる。各国の透析患者83 万1804 例を対象とした調査によっても,それぞれのがん種のSIR が豪州,欧州,米国で異なることが報告されており,日本人においてSIR が高い消化器系がんはいずれの地域においてもSIR が1.5 以下であるが,腎がんと多発性骨髄腫はSIR がそれぞれ3.3~9.9,3.2~5.2 であり,日本人と同様に各地域で共通して高かった。また,米国で行われた末期腎不全患者の追跡調査でも腎がんのSIR がきわめて高いことが報告されており,本邦での調査と同様の傾向が示されている。
【吸収】速やかに吸収される(U)食後投与でAUC が軽度 ..
悪性腫瘍に伴う腎機能低下は,直接的機序と間接的機序によるものに大別される。直接的機序による腎機能低下は,腫瘍細胞による物理的な腎機能への障害として定義され,腎臓組織への腫瘍細胞の浸潤や腫脹による尿路閉塞,腎血管の圧迫などに起因する。
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CKD 患者と透析患者においてがん発症が起こりやすい機序は明確に解明されていない。CKD 患者は慢性炎症の状態になりやすいことが知られており, ,それに伴う酸化ストレスの発生が発がんの危険因子として考えられている。
肝臓、腎障害にも使える。ジェネリックもある。(60歳代開業医、皮膚科)
前述のとおり,がん患者は併存疾患(高血圧,糖尿病,脂質異常症など),生活習慣,加齢などに起因するCKD に加え,悪性腫瘍に伴う慢性的な腎機能低下やAKI を抗がん薬投与開始前から有していることが少なくない。
腎機能「障害者」の高尿酸血症へのアロプリノールとフェブキソスタットの使用法は?(薬局)
腎移植患者(以下,腎移植レシピエント)の発がんリスクは一般人口よりも全体に高値となる。腎移植レシピエントでの悪性腫瘍発生の危険因子には,一般人口と同様の危険因子(加齢,喫煙,遺伝学的要因など)と,腎移植レシピエントに特異的な危険因子(免疫抑制薬使用,透析期間など)がある。特に免疫抑制薬内服によるがんウイルスの活性化やがん細胞へのimmune surveillance(免疫監視機構)の減弱が危険因子となる。
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悪性腫瘍のSIR は腎移植レシピエントでは2.4~3.9 と報告されている, 。また,臓器移植レシピエントでは悪性腫瘍の進行に伴う死亡リスクが,一般人口に比較して5%程度高いことが報告されている。移植腎機能を保持したままでの人・年法での死亡率は,腎移植後1 年未満では悪性腫瘍よりも心血管疾患や感染症で高いが,1 年以降では心血管疾患と悪性腫瘍が同等となる。
[PDF] がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン 2022
フランスの多施設大規模コホート研究では,固形がん患者の12%でeGFR が60 mL/分/1.73m2 未満であったことが報告されている。腎がん患者ではさらにその割合が高いことが知られており,腎摘除術を受けた腎がん患者を対象とした米国の単施設大規模コホート研究では,術前にeGFR が60 mL/分/1.73m2 未満であった患者は全体の29%であったことが報告されている。本邦の研究でも,がん薬物療法の受療目的で入院したがん患者の25%がCKDを有していたと報告されている。他の研究もおおむね12~25%の有病率を報告しており,2017 年の世界のCKD 有病率は9.1%であることを踏まえると,がん患者はCKD の有病率が高い集団である可能性がある。
関連した腎障害(急性腎障害や蛋白尿)、高血圧、電解質異常 ..
がん種別にみると,海外の報告では腎移植レシピエントでのSIR は,口唇がんで20~60 程度ときわめて高く,非メラノーマ皮膚がんも10 程度と高い, , 。しかし皮膚がんや口唇がんは本邦では発症率が比較的低く,SIR は異なる可能性がある, 。またウイルス関連のがんでもSIR は高く,EB ウイルス関連の移植後リンパ増殖性疾患でSIR は10 程度,ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連する子宮頸がんや陰茎がんで3~4 程度,B/C 型肝炎ウイルス(HBV/HCV)に関連する肝がんで1~3 程度と報告されている。そのほか自己腎がんはSIR 3~7 程度,消化器がんや肺がんは2 程度と高い。一般的な前立腺がんや乳がん,卵巣がんなどの発症率は一般人口と大きな差がないことも特徴である, , 。
るが、CKD 患者に対するフェブキソスタットによる腎機能悪化の抑制効果については明確ではない。
がん患者のがん薬物療法開始前に認められる腎機能低下は,腎前性の要因として,嘔吐による脱水やNSAID 使用に伴う腎血流量の低下,腎性の要因として,腫瘍随伴症候群に伴う糸球体障害,腎後性の要因として,腫瘍細胞が物理的に尿管の狭窄や血流障害を引き起こすなど,多岐に及ぶ。これらのがん患者に特有の要因がCKD を進展させる。医療者は,がん患者が腎機能低下の危険因子を多数有する集団であることを認識し,要因の把握と腎機能に関連するマーカーのモニタリングを慎重に行わなければならない。
9.2.1. 重篤な腎障害のある患者:投与しないこと(腎障害を悪化させるおそれがある)〔2.5参照〕。
シロリムス,エベロリムスなど,抗腫瘍作用を併せもつ免疫抑制薬であるmTOR 阻害薬の使用が腎移植後の悪性腫瘍の発症率を抑制するかどうかについては議論がある。腎移植レシピエントに対するシロリムスの発がん抑制効果について検討した2 つのメタ解析では,シロリムス使用群で非使用群に比較して非メラノーマ皮膚がんの発症率がそれぞれ30%および56%減少していたが,他のがん種では減少が認められなかったと報告している, 。
性行為が原因で、腎炎、尿路結石、腎機能障害、膀胱炎になる可能性はあるのでしょうか? ..
腎移植レシピエント300 例でエベロリムス+代謝拮抗薬投与群とカルシニューリン阻害薬+代謝拮抗薬投与群を比較したRCT では,5 年間の悪性腫瘍の発症率が1.6%(2/123 例)および6.4%(7/109 例)とエベロリムス併用群で低かったとの報告がある。しかし一方,シロリムスまたはエベロリムス+代謝拮抗薬の併用群はカルシニューリン阻害薬+代謝拮抗薬の併用群に比較して,悪性腫瘍の発症率は減少しなかったという,Cochrane データベースなどによるメタ解析の報告もある, 。