今後、前立腺がん予防の観点からフィナステリドの役割はありますか?


疫学的研究からコーヒーが前立腺癌の予防効果をもつことが報告されているが,コーヒーがもつ前立腺癌の予防効果はカフェインとは無関係に認められており,発症予防の機序はわかっていない。米国から報告された約50,000 例の男性を20 年間経過観察した大規模なコホート研究では,多量のコーヒー摂取は進行性前立腺癌の発症リスクを低下させたと報告されている。また英国において6,017例を前向きに検討した結果では,コーヒー摂取量が多いとhigh grade の前立腺癌のリスクは減るが,前立腺癌全体のリスクには影響がなかったとされた。最近の報告では相反した結果が出ており,,12 件の論文を解析したメタアナリシスでもコーヒーと前立腺癌リスクとの関連を示すことができていない。


(フィナステリドの長期投与が前立腺がんによる死亡率に与える影響)

緑茶に含まれるカテキンが抗腫瘍効果をもつとされる。本邦で行われた大規模コホート研究では,40〜69 歳の男性49,920 例を追跡し,緑茶飲用と前立腺癌発症との関連が前向きに検討された。緑茶飲用と限局性前立腺癌の間には有意な関連を認めなかったが,1日5杯以上の緑茶を飲用する群では,1日1杯未満の群と比べて進行性前立腺癌の発症リスクが有意に低かった(相対リスク比:0.52(95%CI:0.28〜0.96))。また,60 例のhigh grade の前立腺管内上皮過形成(PIN)患者を緑茶サプリメント投与群とプラセボ群に分けた研究では,緑茶群において1年後の前立腺生検で癌発生が抑制されることも報告されている。

セレニウムはニンニク等の植物や肉・海産物に含まれる微量元素であるが,細胞増殖抑制,アポトーシス誘導作用があることが知られている。前立腺癌におけるセレニウムの予防効果は,皮膚癌予防目的で行われた多施設共同研究で偶然に発見された。1,312 例をセレニウム群またはプラセボ群に無作為に割り付けたところ,セレニウム群で前立腺癌が発生したのはプラセボ群の約3分の1であった(相対リスク比:0.37(p=0.002))。

前立腺癌の腫瘍マーカーのPSAの値が低下してしまうため注意が必要です。

大豆イソフラボンは,豆類および大豆製品に多く含まれ,これらの摂取により前立腺癌のリスクが低下するとの報告がある。大豆イソフラボンとその誘導体「ゲニステイン,ダイゼイン」は,疫学的研究において前立腺癌予防効果が注目されている。中でもダイゼインの代謝産物であるエコールが注目されている。エコールは大豆イソフラボンおよびその誘導体の中で最もエストロゲン受容体(β)との結合能が高く,抗酸化活性が強いことが知られている。さらにジヒドロテストステロン(DHT)と特異的に結合することによりDHTとアンドロゲン受容体との複合体形成を阻害する効果も有することから,前立腺癌の予防効果が強く期待されている,。ダイゼインをエコールへ代謝できるエコール産生者と,代謝できないエコール非産生者に分けた場合,前立腺癌ではエコール産生者の割合が有意に低いことが判明し,エコール産生に関連した腸内細菌も同定されている,。この後,イソフラボン投与に関する無作為化二重盲検試験では,イソフラボン投与によりエコール産生者では血中エコール濃度が上昇したが,非産生者では濃度に変化はなかった。イソフラボン投与12 カ月後の針生検で,イソフラボン群とプラセボ群の間に有意差を認めなかったが,65 歳以上ではイソフラボン群がプラセボ群よりも有意に前立腺癌の発症率が低かった。イソフラボンは前立腺癌リスクを抑制する可能性が示唆されている。

前立腺癌は世界的にみて発症頻度の高い癌の1つであり,特に欧米人ではアジア人の約10 倍の発症率であるとされる。本邦では前立腺癌が増加しており,その背景として腫瘍マーカーPSA の普及があるが,そのほかに高齢化や食生活の欧米化が影響を与えていると考えられる。前立腺癌では,食生活を中心とする生活環境要因が重要な役割を果たしていると考えられ,大豆イソフラボンやビタミンE 等の機能因子が前立腺癌の予防につながるか検証する。

前立腺癌を見逃してしまう可能性があるため医師に申告しましょう。

以上の食品,喫煙,運動,MetS,肥満を考慮すると,リスクを上げる可能性のある要因を下げるライフスタイルに変更することは,前立腺癌の予防に効果が期待できる可能性がある。

一方,ビタミンEの前立腺癌リスクに対する影響をみた最大規模の研究は,フィンランドのAlpha-Tocopherol Beta Carotene Cancer Prevention(ATBC)Study であった。この研究はビタミンEにより肺癌発生率が低下するか評価するものであったが,前立腺癌は主目的である肺癌に付随して検討された。肺癌の発生率は低下しなかったが,前立腺癌についてはビタミンE が投与された群ではそれ以外の群に比べて前立腺癌の発症が有意に少なかった。しかしながら,American Cancer Society(ACS)による約70,000 例の調査では,ビタミンEによる前立腺癌の予防効果はみられていない。このようなことからセレニウムとビタミンE に関しては大規模な無作為化二重盲検試験であるSelenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial(SELECT)が行われた,。この研究では,PSA≦4.0ng/mL等の条件を満たす50 歳以上の男性35,533 例が4群(ビタミンEとプラセボ,セレニウムとプラセボ,ビタミンE とセレニウム,2つともプラセボ)に無作為に割り付けられ,前立腺癌の発症をエンドポイントとして行われたが,予定期間に達する前に予防効果が認められないことが明らかとなった。さらにその後の経過観察では,むしろビタミンEは前立腺癌のリスクを17%上昇させると報告されている,。しかし,前立腺癌患者においては,血中のビタミンE 濃度が健康人よりも有意に低いという報告もあり,依然議論の分かれる部分でもある。

・フィナステリド 錠 1㎎「クラシエ」(プロペシアの後発品・ジェネリック)

最近の研究では,肥満は前立腺癌の発症に関与していることが知られてきており,MetS 同様,前立腺癌のリスク因子として研究されている。Prostate Cancer Prevention Trial(PCPT)では,BMI<25kg/m2の男性と比較すると,BMI≧30kg/m2の男性では低リスク前立腺癌に罹患するリスクは18%低いが,Gleason スコア8〜10 の高リスク前立腺癌では78%増加することが示された。疫学における68,000 例以上の男性を対象としたメタアナリシスによる観察研究では,BMI の増加は前立腺癌全体の発症リスクとしては弱い相関性(5kg/m2のBMI 増加に対して相対リスク1.05 倍)を認めるのみであるが,この関係は進行性前立腺癌ではさらに強くなる。現時点での一般的な見解は,肥満は悪性度の低い前立腺癌と診断されるリスクを低下させるが,悪性度の高い前立腺癌の発症と前立腺癌死のリスクを高めると考えられている。

Sourbeer らは,前立腺癌の発症リスクについてのReduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events(REDUCE)試験のPost hoc 解析で,6,426 例を対象に前立腺癌とMetS 因子との関連性について報告した。ここでは,糖尿病,高血圧,高コレステロール血症,body mass index(BMI)のうち複数のMetS 因子がある男性では高リスク前立腺癌(Gleason スコア7〜10)の発症リスクが高かったことが示された。またBhindi らも,後ろ向き研究ではあるものの2,235 例を対象に肥満,高血圧,糖尿病または空腹時血糖異常,低HDL コレステロール血症,高トリグリセリド血症の5つの独立したMetS 因子と前立腺癌発症との間に有意な関連は認められなかったが,これらのうち3つ以上のMetS 因子をもつ患者は有意に前立腺癌発症のリスクが高かったと報告している。また,2,322 例のMetS 患者を34 年間追跡したスウェーデンの前向き研究では,他疾患による死亡を除外した場合は,MetS は前立腺癌の有意な発症リスクになるとの成績が示されている。しかし,MetS 因子と前立腺癌発症メカニズムの関係性はいまだ複雑であり,今後の解析が待たれるところである。


AGA治療薬のフィナステリドに発がん性はなく安全と考えられています。

プロペシアジェネリック(フィナステリド錠)は、2015年に国内で製造販売が開始されたプロペシアジェネリックです。

この使い方では発がん性はないと考えられているので安心して大丈夫です。

近年,運動療法が身体的,精神的な改善をもたらすことが注目されつつある。運動による前立腺癌のリスクへの影響については,カナダ人を対象とした解析で,50 歳代前半の積極的な運動への取り組みが前立腺癌のリスクを減少させると報告されている。さらに,88,294 例を対象として運動と前立腺癌のリスクを検討したメタアナリシスでは,totalphysical activity(総身体活動)を行うと前立腺癌リスクが低下し(相対リスク比:0.90(95%CI:0.84〜0.95)),特に20〜45 歳,45〜65 歳において有意に低下させるとしている。

注意点は前立腺がんの腫瘍マーカーのPSAの値が半分程度になることです。

喫煙と前立腺癌のリスクについては否定的な報告も多いが,最近まとめられた24 件のコホート研究21,579 例を対象としたメタアナリシスでは,喫煙本数,年数が多い男性は前立腺癌のリスクが上がることが報告されている。また,欧州の男性145,112 例を対象とした前向き研究(EPIC)においても,ヘビースモーカー(25本/日以上)あるいは40 年以上喫煙歴があると,前立腺癌の死亡リスクが上がった(相対リスク比:1.81(95%CI:1.11〜2.93),相対リスク比:1.38(95%CI:1.01〜1.87))と報告されている。最近の研究結果からは,ヘビースモーカーは前立腺癌死のリスクが高くなることが示唆されている。

前立腺がん検診の不利益として,次に示すような問題が挙げられる。

European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)は,7カ国130,544 例を1993〜1999 年の平均4.8 年経過観察した野菜と果物の総摂取量に関する大規模コホート研究であるが,野菜と果物の前立腺癌予防効果は明らかではなかった。これら多数の研究から,食品が前立腺癌のリスクを減らすか増やすかについては明らかではないのが現状である。

5α還元酵素阻害薬、前立腺がん発症を予防、生存は改善せず/NEJM

リコペンはトマトに最も多く含まれる赤い色素で,抗酸化作用が強いとされている。トマトソースを週に2回以上摂取した群では前立腺癌の発症が有意に抑えられていたのに対し,野菜のトマトでは差がなかった。2004 年のメタアナリシスでは,トマトの消費と前立腺癌のリスクには少ないながらも関連があるとされた。49,898例を対象に1986〜2010 年に経過観察した結果では,リコペンの摂取量が多いと致死的な前立腺癌のリスクが減弱していた。理由として血管新生を抑制した結果と考えられた。また,最近のメタアナリシスでも,リコペンの摂取量が多いと前立腺癌の発症のリスクを減らす傾向にあるとされ,リコペンに関しては前立腺癌を抑制する傾向があるとする報告が多い。

「プロスカー」に前立腺癌予防効果、NEJM誌で原著論文が早期公開

カルシウムの過剰摂取と前立腺癌についても研究されている。1日に2,000mg 以上のカルシウムを摂取する男性において,転移性前立腺癌のリスクは500mg 未満の男性の5倍近くになるとされる。12 件の前向き研究を解析したメタアナリシスでは,乳製品とカルシウムを多く摂取する男性では前立腺癌の発症リスクは高いと報告されたが,別の45 件のメタアナリシスでは乳製品,ミルクの摂取量と前立腺癌の発症には関係を認めなかったと報告されている。現状では,乳製品やカルシウム摂取と前立腺癌のリスクは,関連が明確ではないと考えられる。

これらより、 フィナステリド投与患者の血清 PSA 濃度を前立腺癌診断に利用する場合は、

疫学的研究から,前立腺癌に促進的に働く食品として高脂肪食があり,症例対照研究およびコホート研究における結果は一貫している。動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は血清アンドロゲンを増加させるため,前立腺癌のリスクを高めるとされているが,それ以外の要因も提唱されている。多価不飽和脂肪酸はヒト生体内で合成できない必須脂肪酸であり,食事から摂取する必要がある。ω-3 脂肪酸のうち魚類に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA),あるいはω-6脂肪酸のリノール酸等が代表的である。ω-3 多価不飽和脂肪酸やω-6 多価不飽和脂肪酸は,前立腺癌細胞の増殖を抑制することが示されている。6,272 例のスウェーデン人男性を30年間経過観察した疫学的研究では,魚をほとんど摂取しない男性は魚を多く摂取する男性と比べて前立腺癌の発症リスクが高く(相対リスク比:2.3(95%CI:1.2〜4.5)),前立腺癌による死亡リスクも高かった(相対リスク比:3.3(95%CI:1.8〜6.0))。スウェーデン人男性525 例を対象にした研究では,ω-3DHA やtotal marine fatty acid(全海洋脂肪酸)を摂取すると前立腺癌死亡率が40%低下し,total fat(総脂肪酸)や飽和ミリスチン酸等の飽和脂肪酸を摂取すると前立腺癌の生存率が悪化するとされている。しかし,ω-3脂肪酸と前立腺癌のリスクについてはあいまいな部分もあり,さらに最近の報告では相反する結果も出ており,現状ではその関係は明確ではない。

前立腺がんの検診を受ける予定のある方は、検査を実施される医師にプロペシアを服用していることを

前立腺癌の罹患率には民族や地域間で大きな差があり,特に欧米人ではアジア人の約10 倍の発症率であるとされる。古くから日本人の前立腺癌の罹患率は欧米のそれよりも非常に低いものであったが,米国へ移住した日本人の前立腺癌の罹患率は日本に住む日本人と米国に住む米国人の中間になることが知られている,。このことより,環境因子が前立腺癌のリスクを高めていることが推測される。最近の研究では,肥満は前立腺癌の発症に関与していることが知られてきており,また,メタボリック症候群(metabolic syndrome;MetS)も前立腺癌の発症に関連しているという報告も多い。しかしMetS と前立腺癌の発症の関係性はいまだ複雑であり,これからの解析が待たれるところである。

そもそもAGA治療薬で用いられているプロペシア®(フィナステリド)は前立腺 ..

ビタミンD は,活性型代謝物であるカルシトリオールが前立腺癌リスクを下げることを示唆するデータがある。限局性前立腺癌患者にカルシトリオールを投与し,3カ月後には20%の患者において25%以上のPSA 値低下を認めたとの報告がある。

中高年の患者様にはAGA治療薬処方の前に、前立腺癌の有無をチェックさせて頂きます。

そこで,今回の「予防」においても,前述した化学予防薬としての5α還元酵素阻害薬,機能性食品としての大豆食品等に関する記載,つまり前版と同様のCQ についてその後の研究の進捗を記載するとともに,その他の化学予防として,アスピリン,スタチン,メトホルミン等を新たに取り上げた。結果の詳細は各CQ に記載されているが,治療編にみられるような高い推奨グレードはいまだ得られていないのが現状である。しかし,今後とも地球規模からの長期にわたる地道な研究が要求されるのではなかろうか。

しかし,フィナステリド投与が悪性度の高い癌の発生を増加させる可能性を ..

このように前立腺癌の予防について実に巧くまとめられており,前版の準備時点から約5年が経過した現在でも全く時代錯誤を感じさせることなく通用する。つまり,予防医学の研究内容は,日進月歩の著しい疾患の診断や治療法(技術)の進歩に比べると,長期間を要する膨大な規模の疫学的研究に支えられ,時には中長期を要する動物実験に代表される基礎的研究の介入も必要となることから,ややもすると軽視されがちである。また,対象集団や方法論のわずかな違いにより研究結果が多種多様を極め,その解析にも慎重さが求められる。しかし,超高齢社会を迎えた本邦において,今後の社会経済的に真に問われる医学のあり方であることはいうまでもない。

フィナステリドはアメリカのメルク社が、前立腺肥大症の治療薬として研究 ..

一方,大豆食品等の食事面からの介入は,比較的問題は少ないと思われる。しかし,食事という習慣や文化に密接する問題では,その介入方法に慎重さが求められる。アジアでの前立腺癌の低罹患率が食事形態と相関があると仮定しても,アジア型食事形態を世界に求めることは,食の文化を根底から覆すに等しく,受け容れ難いものである。言い換えると,食事に関する科学的検討から新たな予防法の開発を目指す方向性が妥当と考えられる。