確かに、日本ではマムシやハブ(沖縄)、中国では百歩蛇、ベトナムやカンボジアなどではコブラと、普通お酒に漬けるヘビは毒蛇ばかりですね。
原作/チャールズ・グレーバー 監督/トビアス・リンホルム 脚本/クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 出演/ジェシカ・チャステイン、エディ・レッドメイン、ンナムディ・アサマア
本作の題材になった実際の事件は、病院での入院患者の相次ぐ不審死。亡くなった患者の体内からありえない量のインスリンが発見される。つまり故意に点滴の中に混ぜられていたのだ。やがて一人の看護師への疑惑が持ち上がる。その看護師チャーリーは9つの病院を転々としており、勤務先で必ず同様の不審死事件が起こっていた。シングルマザーの看護師エイミーは何も知らずに新たな同僚のチャーリーと親しくなり、彼はエイミーの娘たちとも仲良くなる。やはて警察も動き出すなか、全編、張り詰めた空気に包まれるサスペンスが展開していく。
病院の患者にとって医師や看護師は絶対的に信頼を寄せる相手。しかし日本でもこれと似た事件が起こったように、邪悪な存在がそこに紛れていれば、患者は成す術もない。その恐ろしさが、リアルに伝わってくる。事件を隠ぺいしよいとする病院側の体質も生々しい。本作の舞台は2003年でオバマケアがはじまる前のこと。エイミーは心臓疾患を抱えているが、健康保険に未加入で1回の検査や診察に支払うのが、なんと980ドル(約15万円)! アメリカの医療費も衝撃的だ。エイミー役のジェシカ・チャステインとチャーリー役のエディ・レッドメインは、ともにオスカー俳優だけあって、圧巻の演技で観る者の目をクギづけにする。
ラオスで外国人旅行者6人が相次ぎ死亡 メタノール混入酒で中毒か
原作/カルロ・コロディ 製作・監督・脚本/ギレルモ・デル・トロ 出演/グレゴリー・マン、ユアン・マクレガー、デヴィッド・ブラッドリー、ティルダ・スウィントン、ケイト・ブランシェット、ジョン・タトゥーロ、ロン・パールマン
19世紀の末にイタリアで書かれた原作は、あまりにも有名。ゼペットじいさんが作った木の人形が妖精の魔法によって動き出し、見世物になる物語。ディズニーアニメとして人気となり、2022年には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロバート・ゼメキス監督による実写版も作られた。
そして同じ2022年、“オタク監督”として知られるギレルモ・デル・トロが、人形をわずかに動かし、1コマ、1コマ撮影するストップモーション・アニメで映画にした。基本のストーリーは原作、ディズニーアニメと同じ流れ。嘘をつくと鼻が伸びてしまうピノッキオの特徴や、コオロギのキャラ、見世物小屋でのパフォーマンスなどが描かれつつ、まったく新しい物語に出会ったようなサプライズと感動が用意されている!
ピノッキオの外見からして、シンプルな“木の人形”なので、これまでのイメージが一変。そして、木の人形が動き出すプロセスに、最高の手法がストップモーションであると本作を観て実感する。これはデル・トロの狙いどおりかも。ピノッキオ以外も、すべてのキャラの動きが観ているだけで愛おしいし、要所では最先端の映像テクノロジーもブレンドされているので、究極のアートを体感する印象だ。
そして新たな脚色のアイデアが絶妙。ゼペットがなぜ木の人形を作ったのか。背景となる第二次世界大戦が、どのようにピノッキオや周囲の運命に関係してくるのか。さらに、あの有名な結末はどうなっているのか……。デル・トロらしい、ややマニアックで怖い隠し味、ミュージカルとしての高揚感も含め、大人こそ没入してしまう可能性が大の本作。“生きることとは何なのか”というテーマも物語に美しく溶け込み、忘れがたい後味に浸らせてくれる。
製作・監督/エリザベス・チャイ・バサルへリィ、ジミー・チン 出演/イーロン・マスク
何かと話題がとぎれない、イーロン・マスク。彼がこだわり続けるのが民間人による宇宙旅行で、その宇宙開発のために立ち上げた企業が“スペースX”だ。これは、新たなテクノロジーで実験を繰り返し、ロケットを作る同社の壮大なプロジェクトを追った作品。命綱なしで断崖の登頂に挑む『フリーソロ』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞し、タイ洞窟の救出事件に迫った『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』を手がけた監督コンビなので、ドキュメンタリーとしての見せ方が絶妙な一本になっている。
NASAが2011年のスペースシャトル以来の国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行を模索するなか、スペースXのエンジニアたちも協力。2020年、スペースXが打ち上げたカプセル型宇宙船“クルードラゴン”が宇宙飛行士をISSまで運ぶことに成功するなど、アメリカの宇宙開発復活への道が、ドラマチックに展開。飛行士の家族の思いや、名作『アポロ13』も甦る地球帰還のプロセスなど、何度か心を揺さぶられる瞬間が用意される。人間の宇宙への夢に、素直に感動してしまう人も多いはずだが、イーロン・マスクの野望の深層心理は観ているわれわれに委ねられ、そこも本作の面白さだろう。
ラオス中部の外国人旅行者に人気の町で、同じ宿に泊まっていたデンマークやイギリスなどからの旅行者6人が今月中旬以降、飲酒後に相次ぎ死亡した。
製作・監督/アリソン・クレイマン
“アバクロ”といえば大人気のファッションブランドだが、最近あまりその名前を聞かなくなった気もする。一時ほどの人気はなくなったのかもと思ってたら、実は大変なことになっていた……と大暴露するのが本作。〈アバクロンビー&フィッチ〉は、その元をたどると100年以上前に誕生した歴史あるブランド。2000年代の初め頃から、プレッピー(有名大学のエリート的なファッション)とセクシーを取り込んだスタイルを前面に押し出し、アメリカを中心に爆発的ブームを起こした。モールのショップの前にはムキムキの半裸の男性が立ち、ムスクの香りが漂う店内は暗めの照明で音楽が鳴り響く。広告も、とにかくセクシーさを強調。アバクロのファッションこそ最高にイケてる時代が続いたのである。
そんなアバクロが重視したのは、店の売り上げよりもスタッフの外見。黒人スタッフは夜勤の清掃が割り当てられ、アジア系が多い地区でも白人が優先的に採用される。あまりに差別的な実態に訴えが起こり、CEOの実像が明らかになっていくのだが、一企業に対し「ここまで描いていいの?」という忖度ナシのアプローチが、映画の面白さにつながっていく。次々とスキャンダラスなネタが暴露されつつ、いろいろと考えさせられるのも事実。ファッションブランドには自分たちの方向性があり、「似合う人に買ってほしい」という本音もあるはず。消費者には、単にカッコいいと憧れる心理もある。でもその考え方が行き過ぎると、時代に合わなくなっていき、アバクロのようにあからさまな差別につながってしまう。タイトルどおり、一時代を築いたファッションの“盛衰”がリアルにわかる、これは必見のドキュメンタリー!
原作/エリッヒ・マリア・レマルク 製作・監督・脚本/エドワード・ベルガー 出演/フェリックス・カメラー、アルブレヒト・シュッヘ、アーロン・ヒルマー、モーリッツ・クラウス
映画ファンなら、このタイトルに聞き覚えがあるかもしれない。今から92年前の1930年の映画で、アカデミー賞作品賞などを受賞した名作だ。ドイツのエーリヒ・マリア・レマルクが書いた反戦小説を、ハリウッドが映画化。その衝撃のラストシーンは今もなお語り継がれている。
今回は、同原作を基にドイツが新作として完成。第一次世界大戦中のヨーロッパで、西部戦線へ赴いた17歳のドイツ兵、パウルを中心に、フランス側を相手にした戦争の最前線、その過酷な運命が描かれていく。パウルの志願の経緯や、ドイツとフランス、それぞれの司令官の苦悩や協議のエピソードも出てくるが、基本的に兵士目線による激烈バトルに焦点を絞った作り。観ているこちらも戦地に放り出されたとような感覚で、生死ギリギリのスリルを味わうことになる。
冒頭からいきなり壮絶なシーンの連続だが、ほかの戦争映画と大きく違うのは、犠牲者の“後処理”まで見せる演出。戦地での人命の軽さがひしひしと伝わり、背筋が凍る。数秒前まで隣にいた仲間の死。バラバラになる肉体……と、容赦のない映像にも息をのむばかり。思わず声を上げてしまうショッキングなシーンも用意される。
一方で戦車や銃、手榴弾など、第一次世界大戦時のメカや武器が丁寧に再現され、戦争映画ファンにとっての見どころも満載だ。そしてもちろん、100年以上前の悲劇に現在進行形の戦争が重なる瞬間もあり、人間の愚かさ、戦いの虚しさを突きつけてくる。
Breaking News】遊び場で小学校の従業員が刺され死亡(オランダ)
原作・製作・脚本/ニール・クロス 監督/ジェイミー・ペイン 出演/イドリス・エルバ、シンシア・エリボ、アンディ・サーキス
この『刑事ジョン・ルーサー』は2010年からイギリスのBBCで放映され、シーズン5まで続いているシリーズ。日本でも配信やNHK BSの放映などで密かな人気を保つ刑事モノだが、サイコパス的な事件を多く扱い、衝撃度も高い。
主人公であるロンドン警察の警部ジョン・ルーサーも、ちょっと精神的に不安定なキャラで、その部分がサスペンス感を盛り上げたりする。待望の映画版は、描かれる事件もかなりショッキング。無差別とも思われる連続殺人が発生し、しかもその犯行方法が狂気そのもの。犯人の策略にハマったルーサーは刑務所に収容されるも、なんとか事件を解決すべく脱獄を図ろうとする。
ルーサーを演じるイドリス・エルバは一時、次のジェームズ・ボンド役に名前が挙がっただけあって、パワフルな存在感。そこに人間味あふれる演技、アウトローの危うさを加えて観る者を魅了する。目を疑う脱獄劇や、ロンドンの観光スポットでの緊迫の激闘では、エルバのアクションの才能も冴えわたる。このルーサーを映画で初めて観る人も、俳優と役の最高レベルの合体を確信できるはず。
そして本作で最大のポイントとなるのは、捜査に行き詰まる警察が、ルーサーを“利用”して凶悪犯に接近する流れ。それぞれの思惑が入り乱れ、さらなる衝撃の犯行も起こったりして、スリリングな空気はラストまで充満。犯人がターゲットにするのが、周囲に言えない秘密を抱える人たちだが、それがどう選ばれるか……。観ているこちらも思わず“明日は我が身?”と実感してしまうのも、本作の怖さ!
製作・脚本/D・B・ワイス 監督/ピーター・ソレット 出演/ジェイデン・マーテル、アイシス・ヘインズワース、エイドリアン・グリーンスミス
『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしたように“バンド映画”は、アクション映画とはまた違ったベクトルで、観ているこちらのアドレナリンを上昇させる。音楽そのもののパワーはもちろん、メンバー同士の関係が超ドラマチックだったりするからだ。そんなバンド映画に、またひとつ愛すべき一作が誕生した。
バンドといっても、タイトルにあるように“ヘビメタ”。高校でマーチングバンド部に所属するケビンが、メタル大好きなハンターから誘われ、メタルバンドを組む。ケビンはドラム、ハンターはギターを担当するが、あと一人、どうしてもベースが必要。なかなかメタルに興味がある生徒がいないなか、ケビンが目をつけたのはチェロが得意な女子、エミリーだった。こんなメンバーでバンドが組めるのか、学内のバンドコンテストに出場できるのか、というドラマが、ハリウッド王道の青春ムービーのノリで進んでいく。メタルが好きなハンターは白い目で見られるし、明らかに気弱なイメージのケビンはイジメの標的になり、エミリーは精神的トラブルを抱えていたりと、キャラ設定も絶妙で3人の奮闘に共感してしまう作りだ。
この手の作品、往々にしてディープなネタがいっぱい出てくるが、本作の場合はメタルのバンドや曲の蘊蓄(うんちく)はサラリ。マニアックに行きすぎないので、実に観やすい。ハンターがこだわるのが“ポスト・デスメタル”。つまり自分たちの音楽を極めようとするし、「権力には真実と抵抗、そしてスピードだ」と語られるメタルの精神も、人生哲学っぽくて妙にカッコいい! 劇中には思わぬカーアクションもあったりと、サービス精神もたっぷり。そしてもちろんクライマックスのステージパフォーマンスは怒涛の映像&サウンドで展開されるので、気づいたら興奮と感動に酔ってしまった……という印象。ヘビメタのレジェンドたちが意外なシーンで登場するが、彼らとケビンの会話も実に味わい深い。
バックパッカーに人気のラオス中部バンビエンで、外国人旅行者がメタノール中毒の疑いで相次いで死亡する事件が発生し、波紋を呼んでいる。
原案・監督/シティシリ・モンコルシリ 脚本/コンデート・ジャトゥランラッサミー 出演/オークベープ・チュティモン、ノパチャイ・チャイヤナーム、ガン・スワスティ、ブミバット・タウォンシリ
バンコクの旧市街にある、家族経営の小さな食堂。そこで料理を任されているのが、20代のオエイ。ある日、食堂を訪れた客にその腕を見込まれた彼女は、超高級料理を提供することで知られるシェフチーム“ハンガー”で働くことに。
一流シェフへの道が約束されたオエイだが、ハンガーを仕切るポールは、独創的レシピの開発者ながら、スタッフには完璧を求め、その指導はスパルタ的。過酷な状況でオエイは自身の限界に挑んでいく。数々のハードルを乗り越える“スポ根”的なノリもあり、理想と現実、同僚や家族との関係など、主人公の気持ちに入り込みやすいのが、この『ハンガー』の魅力だ。
映画の後半は、オエイの運命も意外な方向へ進み、料理修行の向こう側にあるメッセージも浮かび上がってくる。お金さえ払えば、本当に美味しいものが食べられるのか。仕事で成功すると大切な何かを失っていないか。そんなテーマが物語にすっきり溶け込んだ印象。
オエイ役は、高校生のカンニング犯罪を描き、日本でも話題になった『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』でも主演を務めたチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。そのクールな表情に誰もが魅せられることだろう。
製作・監督/クリス・スミス 出演/ジョージ・マイケル、アンドリュー・リッジリー
結成40年のタイミングで作られた、ワム!のドキュメンタリー。『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ(Wake Me Up Before You Go-Go)』『クラブ・トロピカーナ』『ケアレス・ウィスパー』『フリーダム』、そして『ラスト・クリスマス』など、2023年の今も愛される曲の数々が流れるだけでテンションが上がり、それぞれの曲の知られざる秘話が重なっていく。小学校で知り合ったジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリー。音楽に夢中になった2人の少年が、念願のデビューを果たし、世界中を夢中にさせるも、ワム!としての活動期間はわずか4年間だった。その短くも濃密な4年を、われわれも一緒に駆け抜けながら体験してしまう。これはそんな作品だ。
その後、アナカプリも2010年に交通事故で死亡し、ジム・ケリーは2013年に死亡した。
製作年/2023年 原作・制作/イ・ナチョン 出演/シン・ヘソン、アン・ボヒョン、ハ・ユンギョン 配信サービス/ネットフリックス
何度も転生し、今は19回目の人生を生きているパン・ジウム(シン・ヘソン)。前世の記憶を持ったまま転生し続ける彼女は、短く終えた18回目の人生時の初恋相手が忘れられず、大人になった彼との再会を望む。原作は同名のウェブ漫画で、ファンタスティックな展開に込められた人間ドラマが視聴者を魅了。人生を何度も生きて身につけた余裕と悲哀、そして率直さを、印象深い瞳やユーモラスな言動に滲ませるジウムのキャラクターが作品全体の魅力になっている。そんな主人公の姿を生き生きと捉えた映像も美しく、全12話が愛おしい時間に。ジウムの恋模様だけでなく、転生にまつわるミステリーにも心地よく翻弄される。
尚、到着日以降の受け取りや生体の死亡、コンディションの急変などについては一切の保障いたしかねます。 ..
製作年/2023年 監督/フィッシャー・スティーヴンス 編集/マイケル・ハート 出演/デヴィッド・ベッカム
2023年10月4日から独占配信されているドキュメンタリーシリーズ『ベッカム』。サッカー界の世界的大スターであるデヴィッド・ベッカムの軌跡を未公開映像を交えながら4話構成で描いている。本人や妻ヴィクトリアのインタビューに加えて、両親やベッカムを一流選手に育てた元マンチェスター・ユナイテッドの監督アレックス・ファーガソン、元チームメートのガリー・ネビル、ルイス・フィーゴ、ロベルト・カルロスらが登場。ベッカムとの秘話を明かしている。
300m先のコインにボールを当てるなど、子供のころから類まれなる才能を発揮していたというベッカム。第一話では、イングランド中に名が知れ渡った1996年のプレミアリーグ開幕戦ウィンブルドンFC戦でのロングシュートなど、スター選手へと成長していく華やかな道のりを関係者の証言を交えて紹介する。順調なサッカー人生が一転してしまったのは、1998年FIFAワールドカップ決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン戦。「デヴィッドは厄介な選手だった」「俺の闘争心に火をつけてくれた」と語るアルゼンチン代表のディエゴ・シメオネに背後からファールを受け、その報復行為をしたとして退場処分となってしまう。PK戦の末、チームが敗退したことによって国中から非難の矛先がベッカムに集中。道を歩いていても暴言や唾を吐きかけられる事態に発展。ベッカムは当時のことを振り返り、「記憶を消せる薬があればいいのに……」と胸中を吐露する。
その後のエピソードでは、逆境からの復活劇、常勝軍団レアル・マドリードへの移籍、周囲を驚かせたロサンゼルス・ギャラクシー入団、そしてパパラッチがつきまとう私生活の様子なども描かれていく。自宅のワードローブにもカメラが向けられるのだが、その様子が圧巻。ジャケットやデニムシャツ、セーター、カーディガンなどがきちんとハンガーに掛けられ、引き出しには下着やソックスが丁寧に畳まれて収納されている。まるで高級ブティックのように整理されていて、くつろぎ空間の自宅とは思えないほどのキレイさ。Tシャツにいたっては「色別に分けたうえで、すぐ下にどの服があるか分かるように、少しずらして収納しているんだ」。さらに驚かされる、というより呆れてしまうのが、その週に着る服を1週間分事前に用意しているところ。最近、身についた習慣だとベッカムは得意げな表情で語るのだが、う〜ん、さすがに几帳面すぎない!?
87年 死亡事故で半年活動停止 88年 チャーミー2度渡米 89年 ポンとナオキ脱退 ..
原案・製作・監督・脚本/アダム・マッケイ 出演/レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、ジョナ・ヒル、ティモシー・シャラメ、ケイト・ブランシェット、メリル・ストリープ、アリアナ・グランデ
天文学を専攻するミンディ博士と、教え子の大学院生ケイトが、地球に向かってくる巨大な隕石を発見。半年後に太平洋に墜落し、その被害は人類を壊滅させると予想される。あわてた2人は、アメリカ大統領に直訴するも、真剣に取り合ってもらえず、TV番組や、大企業を巻き込んで信じがたい大騒動へ発展。とりあえず彗星に攻撃を与えて進路を変えようとする作戦がはじまり……と、基本は地球滅亡のパニック映画なのだが、ノリは完全にエンタテインメント。
次々と事態が変わるジェットコースーターのような流れに乗せられつつ、ホワイトハウスやTV局の目を疑うような事実で超ブラックな笑いを誘ったりする。『サタデー・ナイト・ライブ』出身で、『バイス』などを手がけて、現在のハリウッドで最も勢いのあるアダム・マッケイ監督が、その才能を全開にした印象。
最初はさえない天文学者がメディアの人気者になるミンディ博士役にレオナルド・ディカプリオ。強気ながら、肝心な時に失敗する教え子のケイト役がジェニファー・ローレンス。このコンビのやりとりが最高に楽しいうえに、メリル・ストリープはアメリカ大統領役で大怪演。TVキャスターのケイト・ブランシェット、大企業CEOのマーク・ライランスと、ズラリ揃ったオスカー俳優が、それぞれ過去の作品とまったく違った演技。自身をパロったようなアリアナ・グランデも加わり、サプライズと笑いの連鎖が止まらない。彗星接近のカウントダウンの結果と、彼らの運命は? ここまで先が読めない作品も珍しいし、そのラストも軽々と予想を超えていく!
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製作年/2023年 監督・脚本/ローラ・マクガン 共同監督/ロバート・フォード
1988年に公開された『グラン・ブルー』(日本での最初の公開では『グレート・ブルー』というタイトル)は、フリーダイビングの記録に挑む2人の男の友情を描き、主人公の1人、ジャック・マイヨールが最後にどうなったのか想像力を刺激。多くの人に愛される作品となった。フリーダイビングとは、酸素ボンベなし、つまり無呼吸状態でどこまで深く潜れるかを争う競技。深さへのこだわりあもちろん、水面までの復路も計算し、無酸素での失神のリスクにも備える。時間との闘いであり、つねに死と隣り合わせの過酷さが待ち受けているのだ。本作では限界に挑むイタリアの女性ダイバー、アレッシア・ゼッキーニにフォーカス。実際にダイバーが撮った映像によって、水面の明るさが水深100mで真っ暗と化す恐怖、さらに水面に戻ってくるも気を失いかけているダイバーの生々しい表情など、全編に目を疑う瞬間が詰まっている。
女性としての世界記録をめざすアレッシアの最大のライバルが、日本人ダイバーのHANAKO(廣瀬花子)。このあたりは日本人のわれわれとしても一気に親近感がアップ。そして本作は、緊急時に水中でサポートする救助ダイバーも登場し、その1人、スティーヴン・キーナンとアレッシアの関係は、思いもよらぬエモーショナルな運命へと導かれていく。
バックパッカーに人気のラオス北部バンビエンで飲酒した多数の旅行客がメタノール中毒になり、米、英やオーストラリアなどの5人が死亡した。
製作年/2023年 製作総指揮・出演/シルベスター・スタローン 監督・編集/トム・ジムニー 配信/ネットフリックス
この映画は、スタローンが慣れ親しんだカリフォルニアの家から、東海岸へ引っ越そうと決めた告白からはじまる。まず驚くのは、その自宅の豪華さ。ロッキーの像が飾られ、プールの水がキラキラと輝く庭などが映像に収められ、セレブのプライベートを体感させてくれる。しかし引っ越しの決意も含め、スタローンの語りには、50年近くスター俳優としての人生を体験した者にしたわからない思いが、次々とあふれてきて、予想外に胸を締めつけてくる瞬間が多発する。キャリアのターニングポイントとなった、1976年の『ロッキー』前後のエピソードが濃密に描かれ、その『ロッキー』シリーズに、次の当たり役となった『ランボー』、さらに『エクスペンダブルズ』への流れから、一人の俳優の“歴史”が浮かび上がってくる作りだ。
アーノルド・シュワルツェネッガーやクエンティン・タランティーノ、エイドリアンを演じたタリア・シャイアらの証言も収められているが、やはりスタローン本人の言葉が強いインパクトで迫ってくる。過去の自分のインタビューをカセットテープで聴きながら、当時を振り返り、“チャンスがあれば俺は勝てた、とは絶対に言いたくない”など、名言がとび出す。生まれ育ったNYのヘルズキッチンへの65年ぶりの帰還や、『ロッキー4/炎の友情』でICUに入院し、死を覚悟した秘話、さらに若くして亡くなった息子への思い……。そして全編にスタローンと実父との複雑な関係が影を落とし、その部分はちょっとショッキングだ。本作を観ると、スタローンがハリウッドスターの中でも特殊な存在であることを納得するはず。そして77歳の現在、次のステップへ向かおうとする彼の野心を応援したくなる。
20分前に頭を切り落としたヘビに噛まれて死亡 ヘビの生命力ヤバイ
監督・脚本・演出/ファン・ドンヒョク 出演/イ・ジョンジェ、パク・ヘス、オ・ヨンス、ホ・ソンテ 配信/ネットフリックス
2021年/韓国/全9話
『イカゲーム』で繰り広げられるのは、賞金456億ウォンをかけたサバイバルゲーム。謎の巨大施設に集められた参加者たちが、勝利を目指して各ゲームに挑戦する。ギャンブル癖を抱えて借金にまみれたソン・ギフン(イ・ジョンジェ)をはじめ、一家離散の憂き目に遭った脱北者のカン・セビョク(チョン・ホヨン)、会社の金を横領したエリート証券マンのチョ・サンウ(パク・ヘス)ら参加者の顔触れは様々だが、共通するのは大金を手に入れたい意思。それぞれの事情を抱えた者たちが寝食を共にしつつ、“負けたら即死亡”の世界へといざなわれていく。
また、施設のインテリアやファッション演出も残虐性からは程遠く、基本カラーはピンクとグリーン。参加者のジャージが濃いグリーンなら、運営スタッフの制服は濃いピンクのジャンプスーツで、ポップでキュートな色づかいに意地の悪さを滲ませる。
怖気づいた参加者たちを、一度は日常に帰しもする。それによって浮かび上がるのは、参加せざるを得ない現実、背後にある社会。一方、行方不明の兄を追って施設に潜入する警察官ファン・ジュノ(ウィ・ハジュン)を介し、犯罪行為にまみれた運営側に目を向けることも忘れていない。児童への性的虐待問題を扱った社会派映画『トガニ 幼き瞳の告発』などで知られるファン・ドンヒョクが全9話の監督、脚本を手掛け、腕を振るっている。
バブルスライムとキノコと死体とキングコブラの毒が同じ成分だとしたら ..
製作年/2023年 製作・監督・脚本・出演/ブラッドリー・クーパー 出演/キャリー・マリガン、マット・ボマー、マヤ・ホーク、サラ・シルバーマン、ジョシュ・ハミルトン 配信/ネットフリックス
ブラッドリー・クーパーが演じたのは、名指揮者で作曲家のレナード・バーンスタイン。20世紀を代表する音楽家として記憶されている。ミュージカルの名作『ウエスト・サイド・ストーリー』を作曲するなど、映画界に与えた影響も多大。その生涯は波乱に満ちており、ブラッドリー・クーパーは俳優として若き日々から老年期までを熱演する。指揮者としての動きも完璧に再現。さらに監督として見応え満点の力作に仕上げてきた。
作品の軸となるのは、バーンスタインが音楽に懸けた情熱と類い稀な才能なのだが、女優でピアニストのフェリシアとの愛の物語が同時進行。一方でバーンスタインと男性との奔放な関係など、私生活の事実からも目を逸らさない。フェリシア役、キャリー・マリガンの鬼気迫る演技もあって、“芸術家の妻”の映画としても共感させる作りだ。