[PDF] 生きた細胞内でグルココルチコイド受容体の分子機構を解明


グルココルチコイド受容体はホルモン依存性の転写調節因子である。この受容体遺伝子に生じた変異のために、受容体に対するホルモン親和性の低下、熱不安定性、DNA結合能の低下、受容体数の減少など受容体蛋白の質的、量的異常が生じ、その機能が障害されることが主因である。現在までに20個程のグルココルチコイド受容体異常が同定されている。しかしながら、グルココルチコイド受容体遺伝子に変異を見いだせない症例も存在することから、グルココルチコイド受容体遺伝子の変異だけがこの病態の原因とすることは困難である。この受容体の作用機構にかかわるその他の因子の異常も、本症において今後明らかにされる可能性がある


デキサメタゾンは核内受容体の一種であるグルココルチコイド受容体

急性リンパ性白血病(ALL)は、血液のがんであり、特に小児に多く見られる疾患です。現在の治療法にはデキサメタゾン(Dex)という薬が広く使われていますが、さらなる治療効果の向上が課題となっています。本研究では、中国伝統医学のHuai Qi Huang(フアイア)が注目されました。Huai Qi Huangは、ALL細胞においてグルココルチコイド受容体α(GRα)の発現を増加させる作用を持ちます。この受容体の活性化により、Dexが細胞死(アポトーシス)を誘導しやすくなり、細胞増殖が抑制されました。研究結果から、Huai Qi HuangはDexの治療効果を増強する補助療法として有望であり、ALL患者の治療選択肢を拡大する可能性が示されています。この発見は、ALL治療に新たな可能性を提供する重要な成果です。

本研究では、Huai Qi Huang(フアイア)が急性リンパ性白血病(ALL)細胞において、デキサメタゾン(Dex)の効果を増強するメカニズムを評価しました。Huai Qi Huangはグルココルチコイド受容体α(GRα)の発現を上昇させることで、Dexによるアポトーシスと細胞増殖抑制効果を高めました。これにより、Huai Qi HuangとDexの併用がALL治療の新たな戦略となる可能性が示されました。

フルチカゾンフランカルボン酸エステルはヒトグルココルチコイド受容体(GR)に対し ..

少量のグルココルチコイドは関節リウマチや他のリウマチ性疾患に有用であるが、その副作用により患者や医師の間で賛否両論がある。許容できる副作用の範囲での長期グルココルチコイド使用の条件に関するEULARタスクフォースからのコンセンサスが提案されている。

クッシング病は,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生下垂体腫瘍が原因である.歴史的には,Cushing が第1 例目の患者を1910 年に診療した.グルココルチコイドはグルココルチコイド受容体を介して作用するが,この受容体は全身に分布しており,グルココルチコイド過剰状態であるクッシング病は全身に影響を及ぼす.現在のクッシング病の診断は,特異的症候,非特異的症候のなかから1 つ以上の症候を認め,血中ACTH とコルチゾ-ルがともに高値~正常を示す場合にスクリ-ニング検査を行い,陽性の場合,異所性ACTH 症候群の鑑別を目的として確定診断検査を行う.治療は,ACTH またはコルチゾ-ル分泌過剰を改善するために,手術療法,薬物療法,放射線治療を行う.また新規クッシング症候群診断法であるTSH ratio は,既存クッシング症候群検査法に比べて特異度の点で優れており,うつ病患者やデキサメタゾン代謝に影響する薬剤を服用中の患者でも有用である.

糖質コルチコイドの合成副腎皮質ホルモンであり、グルココルチコイド受容体にリガ ..

ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体(GR)に結合します。ステロイドの結合したGRは、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われています。この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮されます。

【Introduction】
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン( hypothalamus secretes corticotrophin-releasing hormone :CRH)は視床下部から分泌され、下垂体前葉に作用し副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進させる。ACTHは副腎皮質に作用し、これによりコルチゾールが分泌される。通常の血清コルチゾール濃度は5〜24mcg/dlであり、日内で変動した値をとる。コルチゾールはストレスホルモンとも言われるように、身体ストレスや低血圧、重症感染などにより、視床下部-下垂体-副腎系( Hypothalamic-pituitary-adrenal (HPA) )が活性化されることで、コルチゾールの分泌が増加する。これにより日内変動は消失し血清コルチゾール濃度は40-50mcg/dlと高くなる。このような期間中に何らかの原因により最適値以下のコルチゾール産生となれば、「機能的」または「相対的な」副腎機能不全がおきる。敗血症性ショックではコルチゾールの分泌不全に加えて、糖質コルチコイド受容体の減少や組織反応性の低下により、糖質コルチコイド活性が低下する「重症関連コルチコステロイド障害( Critical illness-related corticosteroid insufficiency(CIRCI))」1)を生じることがある。この際、コルチゾールが内因性に上昇するか、外因性に投与されれば、機能的な不全が是正され死亡を回避できるのではないかというのが敗血症ショックに対する理論的背景である。

上段にヒト脂肪組織及び副腎におけるミンラロコルチコイド受容体(MR)及びグルココルチコイド受容体(GR)mRNA ..

18.1作用機序
デキサメタゾン吉草酸エステルは、標的細胞のグルココルチコイド受容体と結合し、炎症・免疫反応に関わる標的遺伝子の転写の活性化やNF‐κB等の転写調節因子の活性化を直接阻害することで、炎症性サイトカインの産生抑制やT細胞等の増殖抑制などの作用が総合的に作用して抗炎症効果を発揮するものと考えられている。また、合成副腎皮質ステロイドの血管収縮作用は抗炎症作用と相関することから、その作用機序も同じと考えられている。
18.2抗炎症作用
本剤の血管透過性亢進抑制作用及び浮腫抑制作用は0.12%ベタメタゾン吉草酸エステル製剤と同等あるいはそれ以上であり、肉芽増殖抑制作用、アジュバント関節炎抑制作用及び遅延型アレルギー性皮膚炎症抑制作用は0.12%ベタメタゾン吉草酸エステル製剤よりも強い(ラット、マウス)。
18.3血管収縮作用
健康成人男子を対象とした皮膚血管収縮試験において、本剤の血管収縮作用は、0.12%ベタメタゾン吉草酸エステル製剤よりも強かった。

投与されたステロイド剤は、細胞内に取り込まれますが、細胞内ではステロイドに特異的なレセプター(受容体)と結合しステロイド・レセプター複合体がつくられます。このレセプターの存在は、細胞内におけるホルモン作用の発現に必要な条件であり、レセプターの存在は細胞ではホルモン作用が発現しません。
ホルモンの作用は、レセプターの数と、ホルモンとレセプターの結合親和性によって決定されます。現在、臨床的に使用されている合成ステロイド剤はいずれも天然型のヒドロコルチゾンよりも生物学的活性が強いのですが、その理由として血中半減期の延長のほかこのようなレセプターに対する親和性の増強があげられています。例えば、デキサメタゾンの場合、ヒドロコルチゾンの約30倍の強さを持っていますが、レセプターとの親和性はヒドロコルチゾンの約8倍であり、自分の副腎皮質ホルモンの生産抑制の強さである血中半減期は約3倍です。


グルココルチコイド受容体はホルモン依存性の転写調節因子である ..

デキサメタゾン アセテート (デキサメタゾン 21-アセテート) はグルココルチコイド受容体アゴニストです。

ヒトのグルココルチコイド受容体結合親和性を比較した試験5)においてブデソニドはデキサメタゾンよ

糖質コルチコイド(Glucocorticoid、グルココルチコイド)の薬は炎症や自己免疫疾患を治療するため広く処方されており、最近ではCOVID-19(SARSコロナウイルス2型感染症)の重症患者の治療にも用いられている。COVID-19は、発熱や息切れなどの症状から、多臓器不全などの重い合併症への急速に進行する。重症患者は「サイトカインストーム」(cytokine storm)を経験するが、このときにはもはやコロナウイルスに対する炎症反応を抑えることはできず、サイトカイン(炎症の分子メッセンジャー)の異常な産生がさらなる合併症を引き起こしてしまう。臨床試験では、糖質コルチコイド受容体に結合する強力な抗炎症薬であるデキサメタゾン(dexamethasone)を低用量で投与することにより、COVID-19入院患者の死亡率が低下したことが示されている。

図 2-5 デキサメタゾンによる Gpx3 遺伝子発現増加へのグルココルチコイド受容体の関与

グルココルチコイド受容体はホルモン依存性の転写調節因子である。 この受容体遺伝子に生じた変異のために、受容体に対するホルモン親和性の低下、熱不安定性、DNA結合能の低下、受容体数の減少など受容 体蛋白の質的、量的異常が生じ、その機能が障害されることが主因である。現在までに6家系、8孤発例で明らかにされているグルココルチコイド受容体遺伝子の変異は、点突然変異あるいは3ないし4 塩基対の短い欠失である。しかしながら、明らかな変異を見いだせない 症例も存在することから、グルココルチコイド受容体遺伝子の変異だけがこの病態の原因とすることは困難である。この受容体の作用機構にかかわるその他の因子の異常も、本症において今後明らかにされる可能性がある。

糖質コルチコイド(グルココルチコイド)受容体はホルモン依存性の転写調節因子である。 ..

糖質コルチコイドは、(estrogen receptor)とともに核内受容体の仲間(ファミリー)に属している。これはリガンド結合ドメイン(ligand-binding domain)、DNA結合ドメイン(DNA-binding domain)、トランス活性化ドメイン(transactivation domain)という3つの部分で構成されている。ヒトの場合、この受容体のリガンドとして最もよくあるのがストレスホルモンの一つコルチゾール(cortisol)である。受容体がコルチゾールに結合すると、受容体の構造が変化し細胞質から核へと移動する。核内では、標的DNA配列に結合し遺伝子発現に影響を与えることができる。糖質コルチコイド受容体は活性化補助因子(coactivator)とも相互作用し、遺伝子発現のしくみをさらに調整することができる。受容体は柔軟なリンカーでつながれたいくつかのドメインで構成されているので、ドメインの構造は別々に決定された。デキサメタゾンに結合したリガンド結合ドメインの構造はPDBエントリー、DNAに結合したDNA結合ドメインの構造はPDBエントリーのものを示す。トランス活性化ドメインはここに示していない。これらのドメインがすべて一緒になり、コルチゾールの結合によって引き起こされる最初のメッセージが伝達される。

ミネラルコルチコイド作用,②グルココルチコイド受容体(GR)を

薬であるデキサメタゾンの構造は天然のコルチゾールの構造と非常によく似ている。このことにより、デキサメタゾンは糖質コルチコイド受容体にぴったりと結合し、同じように体内の炎症を解消する遺伝子発現の変化を引き起こす。この活性のため、デキサメタゾンはCOVID-19の治療において特に効果的である。なぜなら、コロナウイルスによる損傷はウイルス自体によるものだけではなく、制御できない炎症によるものでもあるからである。ところが、デキサメタゾンの抗炎症効果は、使い方や時期を誤ると害をおよぼしかねない。COVID-19の初期段階において、身体はウイルスを撃退するために免疫系を動員する必要があるので、初期の重症ではない患者にデキサメタゾンを使うと、うかつにも患者の状態を悪化させてしまうかもしれない。

デキサメタゾンシペシル酸エステルは、組換えヒト糖質コルチコイド受容体に対する結合親

末梢器官の概日時計は、代謝の合図によって設定される。Lamiaら(Bassによる解説記事も参照)は、概日時計が代謝を調節するかどうかについて検討し、概日時計の構成成分であるクリプトクロムタンパク質のCry1とCry2が、グルココルチコイド受容体などのさまざまな核内ホルモン受容体と相互作用することを見出した。Cry1のグルココルチコイド受容体との相互作用は、合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンによって増強され、グルココルチコイド受容体のルシフェラーゼレポーター遺伝子に対する転写活性化能を低下させた。野生型マウスの線維芽細胞と比べて、両クリプトクロムを欠損するマウス(cry1-/-;cry2-/-)の線維芽細胞をデキサメタゾン処理すると、転写抑制される遺伝子の数が減少し、転写活性化される遺伝子が増加し、特定の標的遺伝子(sgk1、血清/グルココルチコイド調節キナーゼ1をコードする)の転写活性化の程度が増大した。夜間には、糖新生酵素ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ1をコードする遺伝子pck1の発現を誘導するグルココルチコイドの効果が低下しており、デキサメタゾン処理後の夜間には、pck1プロモーター内のグルココルチコイド応答配列へのCry1やCry2の結合が増加した。さらに、デキサメタゾンによって引き起こされるpck1の発現誘導は、cry1-/-;cry2-/-マウスの肝臓において、野生型マウスの肝臓と比べて増加した。cry1-/-;cry2-/-マウスでは、野生型マウスと比べて、長期デキサメタゾン処理による内因性コルチコステロン産生抑制の程度が小さかったことから、クリプトクロムが、グルココルチコイド合成を抑制するネガティブフィードバックに関与することが示唆される。また、長期デキサメタゾン処理によって、cry1-/-;cry2-/-マウスでは野生型マウスと比べて、より顕著な空腹時高血糖と耐糖能異常も誘発された。このように、クリプトクロムは、グルココルチコイド受容体を介する転写を抑制することによって、グルコース代謝を抑制する。

がら、明らかな変異を見いだせない症例も存在することから、グルココルチコイド受容体遺伝子の ..

(serum albumin)は血漿の中で最も豊富に見られるタンパク質だが、デキサメタゾンも他の薬やホルモンと同様にこの血清アルブミンによって身体全体に運ばれる。ところがこのタンパク質に関する因子のため、COVID-19に関連する炎症を治療するときに安全で効果的となるようデキサメタゾンを投与するのは難しい。例えば、糖尿病の患者では、タンパク質中の重要なアミノ酸に対して糖化(glycation)の過程を経て糖分子が結合していることがよくある。こうなると薬のタンパク質への結合が妨げられことがある。イブプロフェン(ibuprofen)のような一般的鎮痛剤なども血清アルブミン上にある同じ結合部位を使い競合するので、同時に服用するとデキサメタゾンの輸送が妨げられる。さらに、肝臓病、栄養失調、高齢などのCOVID-19の危険因子に加え、ウイルス自身も患者の血清アルブミン濃度を下げることがある。この複雑な事情により、内科医が血中におけるデキサメタゾンの遊離:結合の相対比を見積もり、薬の毒性増加、副作用、薬効の低下を招く可能性について判断するのは難しくなっている。

デキサメタゾン アセテート (デキサメタゾン 21-アセテート) はグルココルチコイド受容体アゴニストです。

デキサメタゾンが結合した構造(左、PDBエントリー)とコルチゾールが結合した構造(右、PDBエントリー)の両方についてリガンド結合ドメインの構造が得られている。これらのリガンドは構造が非常によく似ていて、糖質コルチコイド受容体の同じ窪みに結合する。リガンドは原子種ごとに色分けした球で、糖質コルチコイド受容体は緑のリボンモデルで示している。これらの構造をより詳しく見るため、図の下のボタンをクリックし対話的操作のできる図に切り替えてみて欲しい。

ドであるヒドロコルチゾン(コルチゾール)の合成類縁体である。(参照 3、4、5、6)

デキサメタゾンプロピオン酸エステル、メサデルムの有効成分は、細胞の核に存在するグルココルチコイド受容体に結合します。