SGLT2阻害薬の術前休薬、認知度が低い理由は大きく2つあると思います。
DKA回避のためには、明らかになっているこれらの原因や誘因をできるだけ取り除いていくことが重要です。とくに注意すべきはインスリン分泌能が極端に低下した患者さんですので、2型糖尿病として治療中の患者さんに対しても、一度は空腹時血清Cペプチドを測定して患者さんのインスリン分泌能を評価しておきましょう。
SGLT2阻害薬内服中は、インスリン不足のほかに糖質不足や脱水も重要な誘因リスクとなりますので、周術期やシックデイなどの際の一時休薬を必ず守りましょう。
最後に、手術前に休薬すべきSGLT2阻害薬をリストにまとめました。
糖尿病治療薬は、「重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者」に禁忌となっている。
周術期血糖は,高血糖でも低血糖でも患者予後を悪化させる。周術期は血糖値に影響を与える因子が多く,それらが相互的に作用しているため,血糖値の是正は容易ではない。しかし,周術期の血糖管理は近年変化し続けている分野のひとつである。本稿では,進歩してきている周術期血糖管理について,術前血糖管理,術中血糖管理,術後血糖管理,そして人工膵臓による血糖管理にわけてそれぞれ解説する。
当院の内科としては、下記に示す休薬期間を目安として、周術期指示を行っています。
手術患者は,拮抗ホルモン放出により高血糖を呈する。さらに手術侵襲に対するストレス反応は,インスリン抵抗性をきたす。また膵臓β細胞機能も低下するため,血中インスリン濃度の低下が生じる。これらの作用により,周術期のストレス性高血糖が生じると考えられている。糖尿病患者の手術は,在院日数,医療コスト,周術期死亡率の増加と関連している。加えて,高血糖自体が独立して,手術患者やICU患者の感染性合併症,心血管系合併症,死亡などといった臨床的アウトカムを悪化させると言われている1)。
周術期高血糖に対してインスリンを用いてコントロールする中で,低血糖と患者予後との関連がNICE-SUGER studyによって発表された2009年以降,周術期の低血糖も着目されてきた。心臓手術後の強化インスリン療法(intensive insulin therapy:IIT)による低血糖(60mg/dL以下)が,死亡率に差はないものの,呼吸器合併症や滞在期間延長の独立した危険因子となる2)。大腸手術の術前・術後の低血糖発作(72mg/dL未満)は,術後合併症の危険因子(オッズ比19倍)となる3)。
周術期の休薬については、主治医が患者の状態に応じて休薬による ..
SGLT2阻害薬によるDKA発症の機序には、本剤ならではの特徴があります。SGLT2阻害薬を投与すると、尿糖排泄増加により血糖および血中インスリンが低下し、グルカゴン/インスリン比が増加します。その結果、肝臓では血糖低下を補うように糖産生が増加します。脂肪組織では脂肪分解が亢進し産生された遊離脂肪酸が肝臓でケトン体に変わっていきます。SGLT2阻害薬により、全身エネルギー代謝としてはブドウ糖利用から脂質利用の割合が増え、増加したケトン体もエネルギー源として心臓などに好影響を与えることが報告されています。しかし、そのような状況のなかで、不適切なインスリン減量/中断や極端な糖質摂取不足、脱水などの誘因により、この流れが増強されると、酸性物質である血中ケトン体が急増しDKAが発症します。有益とも考えられているケトン体を増加させ過ぎないことが重要です。
以上のように周術期の血糖は,高血糖でも低血糖でも患者予後を悪化させる。周術期は血糖値に影響を与える因子が多く,それらが相互的に作用しているため,血糖値の是正は容易ではない。一方で,新しい糖尿病薬の出現,麻酔方法や麻酔薬の進歩,手術の低侵襲化,周術期血糖管理法に関する臨床研究の積み重ね,人工膵臓などの科学技術の進歩などにより,周術期の血糖管理は近年変化し続けている分野のひとつである。
周術期等の出血性・血栓性リスク管理において休止を考慮する医薬品 ..
手術前後は、食事が中止になることが多く、低血糖のリスクも高いので、そのタイミングで糖尿病治療薬は服用中止となる。血糖値に基づいた量のインスリンを投与して血糖コントロールを行うことが多い。
だが、SGLT2阻害薬は、投与中止後にもケトアシドーシスが遅延する報告も相次いだため、日本糖尿病学会の「」に「手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する」と2020年12月25日に追記された。
周術期管理チームテキスト 第 3 版(2016 年 8 月発行)
今回はSGLT2阻害薬について、なぜ術前休薬の認知度が低いのか、その背景を考察しながら「手術前からやめるべき理由」と「休薬期間」について共有したいと思います。
Webサイトにも掲載予定です。 分類. 成分名. 当院採用医薬品名. 術前休薬期間. 抗凝固薬. ワルファリンカリウム.
糖尿病患者が一生のうち手術を受ける確率は50%,糖尿病患者の術後合併症の頻度は20~30%と高く,その死亡率も非糖尿病者に比して高い.また,非糖尿病者に比べて糖尿病患者では高血圧,虚血性変化,不整脈が多く,肝,腎,肺機能の障害や尿路感染,電解質異常も高頻度に合併している1).整形外科領域の術後においても,糖尿病患者における手術部位感染の頻度が高いとされている2).これらの理由から,糖尿病患者の手術では,術前からの周到な準備と周術期における細やかな血糖コントロールが不可欠である.
[PDF] 糖尿病用薬(ビグアナイド製剤,SGLT2阻害薬)の術前休薬期間
近年,血糖降下薬として使用されているsodium glucose co-transporter 2 (SGLT2)阻害薬が,2型糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)のみならず,糖尿病非合併CKDに対しても使用が可能となりました。今後,CKDに対するSGLT2阻害薬の使用が増加することが予想されますが,SGLT2阻害薬投与を推奨するCKD患者像や,投与時のさまざまな注意点などの情報を,専門医のみならず一般医家の先生方にも幅広く共有することは,CKD患者の透析導入を阻止すると同時に,副作用や有害事象の発症を未然に防ぐことにつながると考えます。日本腎臓学会では,SGLT2阻害薬の有効性や安全性を理解した上でCKD患者に対してSGLT2阻害薬が適正に使用されるよう,日本糖尿病学会と連携して"CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation"を策定しました。日本糖尿病学会が策定している「糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」も参考にしながら,本recommendationをCKD診療に御活用ください。
今後,新たなエビデンスの創出により改訂が必要となる場合には,随時内容を更新いたします。
ただきますので、周術期管理センターを受診される際にお申し出下さい。 ..
このように、SGLT2阻害薬は、注目度アップにより処方量が増加傾向です。手術を受ける患者さんがSGLT2阻害薬を服用しているケースも多くなっています。
SGLT2阻害薬内服中は、インスリン不足のほかに糖質不足や脱水も重要な誘因リスクとなりますので、周術期 ..
SAMBA(Society for Ambulatory Anesthesia)の日帰り手術患者に対する周術期の血糖コントロールの提言8)では,HbA1c 7.0%未満,空腹時血糖値90~130mg/dLならびに食後血糖値180mg/dL未満が望ましいとしている。AAGBIの提言と同様,DKAや高浸透圧性高血糖症候群などを合併している場合は手術を延期するべきである(表1)。
④周術期あるいは手術に備えて厳格な血糖コントロールを必要とする場合 ..
糖尿病領域におけるトピックとして,新規糖尿病治療薬の登場があげられる.経口血糖降下薬では,2009年に国内初のdipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬であるシタグリプチンが発売され,現在では複数のDPP-4阻害薬が日常診療で使用可能となっている.また,2014年には,近位尿細管でのグルコース再吸収を阻害して尿糖排泄量を増加させることで血糖値を低下させるsodium glucose transporter(SGLT)2阻害薬が登場し,2021年からはミトコンドリアに作用することでインスリン分泌の促進と肝臓・骨格筋での糖代謝改善で血糖降下を示すイメグリミンも使用可能となっている.注射薬においても,2010年にグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬が発売され,2015年からは週1回製剤も加わり,近年ではインスリンとの混合剤も使えるようになっている.また,インスリン製剤の分野でも,2012年にインスリンデグルデクが2012年に登場し,また,濃度を高くするなどしてより平坦で持続的な効果を示すようにしたインスリングラルギンU300も2015年に加わった.さらに,2020年からはインスリン溶液の添加物を変更することで従来の超速効型インスリン製剤よりもさらに効果発現が早くなった超速効型インスリン製剤が使用可能になっている.こういった新規糖尿病治療薬を既存の糖尿病治療薬と組み合わせることで,これまで以上に患者個人の病態に合わせた治療を行うことが可能になっている.
Adjuvant TAGRISSO|周術期薬物療法を患者さんに適切に届けるために -ADAURA試験 ..
新規糖尿病治療薬の登場に伴い,注意すべき合併症も報告されている.周術期管理という点で特記すべきものとして,SGLT2阻害薬に関連した正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic diabetes ketoacidosis:euDKA)がある.糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は,高血糖高浸透圧症候群とともに,糖尿病の致死的合併症の一つであり,一般的に高血糖(250mg/d以上)を伴うとされている.一方,SGLT2阻害薬の処方下では高血糖を伴わないケトアシドーシスの症例が報告されており,本薬が関連した周術期ケトアシドーシスのシステマティックレビューでもeuDKAが報告されている3).症状はeuDKAと従来のDKAでほぼ同じであり,糖尿病全般で一般的な口渇,多飲,多尿に加え,ケトアシドーシスに伴う嘔気や嘔吐,腹痛,呼吸の変化(Kusmaul大呼吸)などである.診断は血液ガスによるアシドーシスの確認とケトーシスの確認(血中ケトン体高値や尿ケトン陽性)でなされる.特にeuDKAでは著明な高血糖を認めないため,(一般的な臨床でも汎用される検査という意味では)尿定性での尿ケトン陽性が唯一の手がかりとなる場合もあるので注意が必要である.SGLT2阻害薬は近年,心不全への適応拡大や腎保護効果などが報告され,処方頻度が上昇している.「診療の実際」の項目で解説するが,術前にインスリン治療へ変更されていれば周術期のeuDKA発症の回避が期待できる.しかし,外傷による緊急手術の場合など,インスリン治療への切り替えができず,SGLT2阻害薬の効果が遷延するような場合,本症に遭遇しうることに留意する必要がある.
病棟シフトの日は半日病棟へ行き、患者さま面談(主に持参薬や使用薬剤の確認、周術期 ..
腎機能障害を有する2型糖尿病患者に、本剤10mg又は25mgを1日1回52週間経口投与したプラセボ対照二重盲検比較試験を行った。
投与24週時のHbA1c(主要評価項目:NGSP値)の投与前値からの調整平均変化量について本剤10mgは軽度腎機能障害患者(eGFR60mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満)で、本剤25mgは軽度腎機能障害患者及び中等度腎機能障害患者(eGFR45mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満)において、いずれもプラセボ投与群と比べ有意な差が認められた。
投与52週後における副作用発現割合は、プラセボ群で27.3%(87/319例)、本剤10mgで37.0%(37/100例)、本剤25mgで31.5%(101/321例)であり、主な副作用は低血糖(プラセボ:14.4%(46/319例)、10mg投与群:16.0%(16/100例)、25mg投与群:15.9%(51/321例))及び尿路感染(プラセボ:5.6%(18/319例)、10mg投与群:5.0%(5/100例)、25mg投与群:4.7%(15/321例))であった。(外国人データ)
周術期における Sodium glucose co-transporter 2 阻害薬の適正な休薬に関する現状調査
欧米先進国では,日本の現状とは異なり,図19)に示すように,術前から糖尿病治療チームにより集学的な血糖管理を行う。手術予定患者に随時血糖値を測定し,200mg/dL以上またはHbA1cが8.0%以上であれば,糖尿病治療チームが術前,術中,術後の血糖管理に介入する。したがって,外来の早期の段階から専門チームが介入できるという点で日本とはシステムが異なる。
周術期口腔機能管理科 · 病理診断科 · 放射線科 · 放射線治療科 · 麻酔科 · 輸血科 · 栄養支援 ..
周術期の患者は電子添文上の禁忌に該当します。
糖尿病を有する周術期の患者には本剤の投与ではなく、インスリン注射による血糖管理が望まれています。
SGLT2阻害薬の休薬期間のない緊急手術は、周術期の正常血糖ケトアシドーシスの発症率が高い傾向があった。 英語
【前編】
●はじめに:なぜ、いま周術期管理が熱いのか(10分/讃岐先生・鈴木先生)
●講義①:術前の患者さんの状態把握・リスク評価(23分/鈴木先生)
併存合併症/術前ドーピング/たばことお酒と手術/術前の食事はどうする
●講義②:手術開始前/手術中/手術終了前に気をつけるポイント(21分/讃岐先生)
プレウォーミング/術中患者観察/WHO手術チェックリスト…ほか
【後編】
●講義③:病棟での術後疼痛管理の実際と看護師さんの注意点(32分/鈴木先生)
基本的な鎮痛管理/IV-PCA/硬膜外麻酔(PCEA)/持続神経ブロック(PNB)
●講義④:術後の患者観察ポイント(28分/讃岐先生)
改変Aldreteスコア/悪心・嘔吐/シバリング/低酸素/低血圧/術後せん妄ほか
●質問:質問コーナー(6分/讃岐先生・鈴木先生)
・室温についてですが、夏も冬も変わらず、入室時は26~28℃調節でしょうか?
・周術期管理において、マンパワー不足でも最低限行えることはありますか?
・うつ熱のリスクがある手術(口腔外科の手術など)の術前加温について
・講義のまとめ