コブラのまあそういわれるとそうなんだがこりゃまいったなぁ!の画像がこんなにも ..


小雪が覚えている限りでは、これは京の言葉だった。よし子(仮)の自殺未遂事件の際に、屋上で口にした言葉。乙女がかつて央太に言ったそれとほとんど同じ内容だ。偶然とは思えない。であるならば、もとは乙女の持論なのだろうか。それとも二人の間の、共通理解なのだろうか。
乙女はいつの間にか腕組みをして楽な姿勢で立っていた。小指を耳の穴に差し込んで一気に引き抜くと、ふっと軽く息をふきかける。
「……という説教が、央太くんにどれだけ理解できたかはさておき。まあ、君の努力が由衣子ちゃんの努力に遠く及ばないことだけは確かね。日記の存在は知ってる? 由衣子ちゃんが、手術前につけていた日記、というか記録帳」
央太は一度だけ小さくかぶりを振った。
「君の名前は報告書には記載されてない。私が君のことを知っていたのは、そのノートに、君の名前がびっしり書かれていたからよ。彼女の、君との思い出の全てがそのノートには記されてあった。……術後の自分のために書いておくんだって話してくれたわ」
「知らない、俺は。そんなの」
「あらそう。見たくないものほど、わざわざ目を凝らさないと見えないようになってんのよ、世の中は」
小雪に続いて乙女までもが、やけに冷たく言い放つ。彼女たちは忘れていた。完全に、視界から彼の存在を抹消していた。見たくないものは目を凝らさないと見えないようになっている──二人にとってそれは今、キング・オブ・役立たずと化した京の存在だった。
「由衣子ちゃんはさ、選んだんだよ。ちゃんと」
瀕死の人間が今わの際に出す、しゃがれきった声だった。京の顔色は、発熱の赤から血の気の失せた青、そして白へと変わり、今はもう古墳から出土された土偶の色と化している。
「君に二度と会えない道よりも、どんな形でももう一度会える道を」
「……うるさい」
「“二度と会えない道”を進むしかなかったスプラウトを、俺は知ってる。どちらか一人がその道を歩めばもう一人もそっちにいくしかない。……そっちを選んで由衣子ちゃんを巻き込んでいるのはお前の方だろ」
「うるっせぇんだよ、でたらめ言うな! 都合いいことばっか並べて、あの時も、今も! もう騙されない! 俺は絶対にセイバーズなんか信じない!」
央太はゴミでも放り投げるかのように、京を前方に突き飛ばした。京の体力はもともとゼロに近かったが、長時間ヘッドロックをかけられていたこともあり、いよいよ底をついたようだ。へなへなと倒れこむ他術が無い。央太が鬼気迫る表情で懐に腕を突っ込むのが見えた。
「シン! 小雪!」
一番手っ取り早い指示を床に向かって叫ぶ。名前を呼べば、おそらくそうしてくれるだろうと踏んだ。床に転がりながらも何とか振り向くと、例の筒状のブツが高らかに宙を舞っていた。視界の中央では戦乙女が、美しきおみ足を150度近く上方へ突き出している。
「京! 生きてる?」
シンが寄って来た。
「いや、違うだろ……」
「は、何が。抜群のコンビネーションでしょ」
シンが荒っぽく京の体を引きずり起こす。こうじゃない。こんなはずじゃなかった。
「逆だろ……普通! 俺を介抱するのは小雪の役目で、“あれ”をやるのがお前の役目だろ!」
京が口元を引きつらせながら指さしたのは、腕拉ぎ逆十字固めを見事に決められて悶絶する央太の姿だ。当然、決めているのは小雪ということになる。
「いや。僕、ああいう荒っぽいのはちょっと」
遠くを見るような虚ろな目で、その光景をぼかそうとするシン。視界は誤魔化せても、央太の断末魔は否応なしに全員の鼓膜を震わせていた。
「おーい、携帯回収! 誰か警察やさんに連絡してー」
「その前にオペ課に事情説明してこい。青山くん、内線つなげて」
「あ、金熊課長。そう言えば私こないだの報告書をもらいに来たんでした。ちょっぱやでもらえます?」
職員それぞれが、断末魔を聞きながらも歪んだデスクや、散乱した書類を片づけ始める。冷静なのか鈍感なのか、はたまた肝が据わっているのか、央太には気にしている余裕はなかった。
京が千鳥足で再び央太の前に向き直る。視線だけで、小雪にそろそろ解放するようにと指示を出した。正直、真っ直ぐに立っているのが困難だ。床が揺れているのか、天井が揺れているのか、安定しない足場に合わせて京もふらふらと体を揺らした。ただし視線にだけは、全精神力を集結させる。央太の目を射抜くよう努めた。
「スプラウトの心は“ここ”にあるとでも思ってんのか?」
アカンベーをする。無論、目的は彼を小馬鹿にするためではない。スプラウトの証、命の代名詞であるアイを確認させるためだ。央太に目立った反応はない。
「無くなったものは一から作ればいい。央太クンが覚えているなら、知っているなら、何も問題ないはずだろ。思い出ってのは……記憶ほどヤワじゃない」
もう一度、その言葉を口にした。正しい意図が伝わるように。央太は少しだけ顔をあげた。そして少しだけ、奥歯を噛んだ。
「……うるせぇ」
「どうするかは、自由だけどな」
京はいつも通りのしまりのない笑みを浮かべると、まだ歪んだままの自分のデスクに腰を落ち着け──
「うわっ! 京!」
「何やってんだっ。担架持って来い、担架!」
──ようとしてそのまま、そこらじゅうのものをなぎ倒しながら大往生した。図らずとも自身の予言通りとなったわけである。うず高く積み上げていた書類の山が、時間差で落ちてきた。
「何やってんだか。目立とうとするからよ」
乙女は興味薄にその場を立ち去ろうとする。本来の目的であった報告書を手に入れたのだ、この面倒極まりない現場に長居する理由はない。
「お、乙女さんっ」
小雪は呼びなれない名を、何とか口にして呼びとめた。こう呼ばないと乙女は振り向かない。
「用が済んだから課に戻るわ。あとよろしく」
「あの……」
「何か、訊きたいことがある? それは、私に?」
小雪は無意識に口をつぐんだ。その理由を瞬時に考える。おそらく、乙女の切り返しが的を射ていたせいだ。
「いえ。違う、と思います」
「あら、そ? じゃ、それは本人に訊くといいわ。そうそう、小雪ちゃんの啖呵も蹴りもなかなか良かったわよ」
乙女は悪戯っぽく笑うと後ろ手を振りながら保安課を後にした。当然、片づけと事後処理は放棄だ。あちこちで鳴り響く電話のベルと、金熊と荒木の怒声とで課内は一気に騒がしくなった。いつの間に招集されたのか、システム課の連中が何やら文句を言いながら京が横たわった担架を運び出していく。城戸とシンが、央太の身柄を拘束して引き渡しの準備をし始める。
隔離されていた空間が息を吹き返す。止まっていた時間が動き出す。そんなふうに息苦しかった間も、時計の針だけは容赦なく動いていた。短い昼休みがやがて終わる。


反AI主張されても説得力がないと言われると、全然範囲の違う話なんだけどコブラさんのまあそういわれるとそうなんだがこりゃまいったなぁ!になる

その目に、どこかで出会っているような気がした。反抗期真っ只中の中学生スプラウトだったか──違う。5年間付き合った彼女の二股が判明した友人だったか──それも違う。
瞼を閉じると、どういうわけかそれがすんなり思い出せた。
そう遠くない過去に、鏡の中にその目の少年は住んでいた。朝も昼も夜も、その少年の目は暗く淀んでいて、一切の光を受け付けなかった。その目が映す世界もまた、当然のように暗かった。故障したレンズで撮影した、明度の低い写真のようだった。
鏡に映った自らの淀んだ目を見た時、京はまず自分がブレイクしたのではないかと疑った。そしてすぐにそうではないことを確信した。ブレイクスプラウト特有の、断続的な濁りとは明らかに違う。それは終わりのない闇だけを映すレンズだった。
もう鏡の中にその少年は住んでいない。朝起きて身だしなみを整えるときも、あくびをしながらパトロールをし社用車の窓ガラスに映ったときも、誰かの瞳に映り込む自分の瞳を見たときも、京の世界には色があるし光がある。
(眩しいな……)
瞼の裏が必要以上に明るい。無意識に眉を潜めた。ごく近くで、リズム良く林檎の皮を剥く音がする。空間に響いているのはどうやらその音だけのようだった。静かで心地よい。
京は虚ろな意識で、何とか状況を整理した。穂高央太との大立ち回りが決着を迎えたところまでは覚えている。その後デスクで一休みしようとして、誰それの悲鳴や怒声が聞こえてきて、記憶終了。ということは、ここはおそらく医務室かどこかで林檎を剥いてくれているのは彼女しかいない。
「小雪ぃ!」
「何だ、気が付いたか。いきなり起き上がるなよ、手元が狂う」
勢いをつけて上半身を起こすと、そこには絶望が待っていた。眉間に深い皺を刻んだ金熊と、クオリティの高いうさぎさん林檎が同時に京の視界に割り込んでくる。とりあえずやるべきことは、目を逸らすことか。
「課長、なんでここに」
「なんでって、お前が派手にぶっ倒れたからだろう。……泣くなよ、気持ち悪い」
泣きたくもなる。派手に倒れたなら、何故起きた瞬間に心配顔の同僚や部下に囲まれていないのだ。金熊の顰めつらにオプションがうさぎさん林檎ではやりきれない。悲嘆に暮れながら、ついでに辺りをぐるりと一瞥した。I-システム課の一画にある医務室に居ることは間違いなさそうだ。特に寝心地の良くないベッドに、京は頭をかきながら座りなおした。
金熊は納得がいかないように小首を傾げて、形の整ったうさぎさん林檎をフォークごと京に差し出す。京は黙ってそれを受け取った。
「穂高央太、どうなりました」
「お引き取りいただいたよ。天野由衣子ちゃんも迎えに来たしな。まぁいろいろ誤魔化して、厳重注意で済むようにしといたから」
「相変わらずだなー……」
「お前がそういう方向に持っていったんだろうが」
「あれ、そうでしたっけ?」
京の白々しい笑みに、金熊は歯ぐきをむき出しにして対抗したかと思うとあっさり席を立った。
「えー。課長、行っちゃうんですかぁ。俺一人をここに残してー」
「京介」
京の笑みが消える。金熊が自分の座っていたパイプ椅子に、茶封筒を置いた。乙女が持ってきたものだ。金熊がこれを持っているというこは、無論中身を検めているはずだ。京は黙って金熊を見上げた。
「あの事件に関して、お前が独自に動くことに今さら苦言を呈するつもりはない。ただ、焦りすぎるな。必要なところはちゃんと周りを頼れ、いいな」
一瞬、返す言葉を考えた。しかしすぐに思い直した。
「分かってますって。了解」
京と金熊、各々思うところは別にあるが同時に苦笑を洩らした。金熊はそれ以上何も言わなかったし、京も特に補足をしなかった。
金熊が退室してから京はのそのそと手を伸ばし、その封筒を手に取った。中は数十枚の写真だ。この手の資料は定期的に乙女から手渡される。中身を引き出そうとし、すぐに止めた。熱は引いたのか気分は悪くないが、とにかく何か気だるさが残っていた。
天井を見上げながらそのまま仰向けに寝転んだ。
「思い出は……ヤワじゃない」
乙女の口癖を、いつしか自分の口癖のように口ずさむようになっていた。彼女の考え方には共感できるところがいくつもあって、それはセイバーズとしての京を何度か救ってきたし、支えてもきた。バディを組んでいたころもそうだったし、今もそれは変わらない。
「ヤワじゃないから、困るんだよな」
体力の回復を図るため、再び瞼を閉じた。すぐに睡魔はやってきて、京を深い眠りの世界へいざなってくれる。意識が墜ちる瞬間、京はまた、あの目をした少年に出会ってしまった。絶望という名の淀みを持ったその少年はまだ、瞼の裏に息を殺して住んでいた。

・ ・
「い・・・いかんミッキー君!今すぐ隠れるんだ!」
「ジェイン君は・・・」

スコーシオが叫ぶ。

「な!?・・・・・・」
「なんで馳地君はジェイン君を襲わないッ!!」
「ヤツは・・・「方向」を知っているぞ!!」「『矢』を!!」

ダァッー―

ジェイン君は、の先を言う前に走っていってしまった。




(十六夜)

ガッシン

ミッキーが手を放したことで円盤の傾きが不安定になりかけたが、そこは『人数』でカバーする。
いぜん力は抜けない。ここで力の入れようを変えてしまえば、円盤の傾きが変わってしまう。
マグマは新稲たちから離れ、また流れてくる恐れもなさそうだ。

たレンズを生えてた樹木に投げ込んでおいたんだが……まあ、破壊されただろうな ..

いつも通り、京は一人保安課の自分のデスクに居残っていた。いつも通り書類に埋もれて、いつも通り打つ気もないノートパソコンを開いたままにしている。そしてやはりこれもいつも通り、見るともなしに黒いアクリルファイルを広げていた。
「アイナンバーの下一ケタは7……プリズムアイ……」
「そして額に銃痕」
独り言のつもりで呟いたのに、予想だにしない横やりが入った。過剰に驚いて振り向く前に、乙女の端正な横顔がすぐ隣にあることに気付いた。結局それにも驚いて、二重に肝を冷やすことになった。
「びびらすなっ。性格悪ぃな」
「心外ねー。無駄な残業で電力を無駄遣いしてくれるブラック社員に、注意をしにきただけでしょ」
「そりゃ俺のことか」
「他に誰がいるのよ」
京は苦虫をつぶしながら壁にかかっている時計に目をやった。午後10時。確かにもうそろそろ帰宅すべきかもしれない。ここ最近は大きなセイブもなかったから、保安課内には誰も残っていなかった。小さく嘆息してノートパソコンをシャットダウンさせる。
「はいはい。帰りゃいいんでしょ、帰りますよ」
席を立ちながら、ファイルを所定の位置に立てかけた。
「こっちも……できるだけ手をつくす。今さら焦って、どうなるってものでもないでしょ」
京は一瞬目を点にして、それから居心地が悪そうに後ろ手に頭を掻いた。金熊と似たようなことを言う。それとも彼の差し金だろうか。思い直してすぐさまかぶりを振った。これはおそらく、乙女なりの気遣いなのだろう。
(もう充分助かってるけどな)
口には出さずにおいた。代わりとばかりに自分に言い聞かせる。
焦るな、集中を切らすな、平常心を保て、そして常にアンテナを張れ──何かのまじないのように最近は繰り返しこれを唱える。京が、スプラウトセイバーズに入社してから金熊に教わった心構えだ。唱えて、確認して、いつも通りの自分を保つ。
京は大あくびを漏らしながら、早くも廊下の電灯スイッチに手をかけた乙女の後を追った。

翌朝の保安課は、いつもより幾分慌ただしかった。というのも、金熊が本社会議から持ち帰った事案を発表するとか何とかで、いつもより始業時間を早めたからである。午前7時、普段なら天気予報からの誕生月占いに全神経を投入している時間だ。
「なんだ浦島、そのしかめっ面は。今さら異議申し立ては聞かんぞ」
金熊が保安課の扉をくぐるなり、目敏く京の表情を注意する。高血圧の金熊には想像にも及ばないかもしれないが、大抵の二十代から三十代、いわゆる働き盛りというやつは揃いもそろって朝が弱い。不規則家業はなおのことだ。
「異議というか……どうしても気になることが」
京は金熊から視線を逸らすべく、小さく俯いた。その仕草がやはり金熊の目に留まる。デスクに使い古した皮の鞄を置きながら片眉を上げた。
「なんだ。手短に話せ」
「……今日の俺は、一体全体、全12ヶ月の中で何位相当の運気に当たるのかなって」
「よーし、みんな。アホはほっておいて手元の資料を見てくれー。今回のターゲットである狩野製薬の概要から説明するー」
保安課の各々が無言で資料の表紙をめくる。あんまりだ。誰ひとり冗談が通じない。この時点で本日の運勢ランキングが10位以下であることは明白である。こういう日こそお助けラッキーアイテムをチェックしておきたいというのに。
京も渋々資料をめくったのを視界の端に確認すると、金熊は仕切り直しとばかりに小さく嘆息した。
「以前ちらっと話した通りだ。本日よりしばらくは本社と各支社で連携して、この、狩野製薬の動向を監視することになる。具体的には管轄内にある事務所ビルと研究施設、だな。この期間は普段のバディに限らずローテーションを組んで監視班をまわしていく。メンバー割は最終頁にあるから、後で確認しといてくれ」
こういうとき、大抵の二十代から三十代、いわゆる働き盛りというやつは揃いもそろって早速最終頁を繰る。確認も何も回すメンバーはここにいる少人数だ。金熊のわざとらしい溜息も聞こえないふりで流して、京も半眼でメンバー割に目を通した。
感想はおそらく全員同じである。それにいち早く反応、というか反論したのが珍しくも荒木だった。
「いやいや……、課長。これだと通常業務はどう回していくんです。総動員、待機人員なし、これだと保安課が機能しないでしょう」
荒木の呆れ声に皆胸中で頷く。同時に自分の資料に不備がないことと何かの見間違いでないことも知る。監視のローテーションメンバーには金熊自身の名も記されていた。
荒木のもっともな批判を一身に浴びても、金熊は動じる様子を見せない。
「まさか……冗談でしょう」
「そのまさか、だ。通常業務はストップ。不足人員は生活課、システム課からも補充するように指示を出す。いいか、保安課全職員はこの案件の解決に最善を尽くすよう命令が下った。皆、そのように承知してくれ」
諦めたようにかぶりを振りながら、資料をもとの頁に戻す荒木。露骨な彼とは対照的に、京は小さく苦笑いをこぼしただけだった。
金熊は昔堅気の、少し古臭いタイプの人間だ。良く言えば情に厚すぎる。それだから冷徹冷酷に徹するには、あるいはそれを演じるには爪が甘いところがあった。今回もその不器用さが見え隠れしていて、京としては苦笑いで済ませるほかなかったのである。「最善を尽くしてくれ」ではなく、「尽くすよう命令が下った」ということは、それが金熊本人の意思ではなく本社の意向であることを暗ににおわせてしまっているではないか。
金熊も心底納得しているわけではない、それさえ分かれば十分だ。
「話を戻すぞ。狩野製薬にかかっているのは麻薬製造、売買の疑いだ。端的に言うとな。通常ならまるごと警視庁扱いのはずなんだが──次の頁をめくってくれ」
何故今回に限ってセイバーズが首をつっこむのか──それも全社をあげて──その理由は、製造・売買されているとされる麻薬の効能にあった。資料に目を通して、やはりいち早く荒木が特大の溜息で遺憾を顕わにした。
「は~……狩野って言ったらそこそこ大企業じゃねぇか。何でこうわざわざ危ない橋を全力疾走するかね」
「まぁでも、これなら本社が臨戦態勢に入るのも納得ですね。警察屋さんよりも先に“ホシ”を挙げないとセイバーズ全体の沽券にかかわる、と」
城戸が皮肉っぽく強調した言葉に、皆肩の力を抜いて思わず笑いをこぼした。
「そういうことだな……質問はあるか。内容に関して」
金熊の振りには、小雪が挙手をして応えた。
「このドラッグの効能、『スプラウトを意図的にブレイクさせる』ってどう解釈したらいいんですか? そこに何か、有益性があるってことでしょうか」
「あるだろうな、どういう団体にしろ組織にしろ反スプラウト派には。遺体売って、それをビジネスに変える連中がいるんだ。不思議じゃないだろ」
小雪の問いには京が答えた。それも若干食い気味に。
「それよりも。実際に被害が確認されて、その原因がこの新種のドラッグで、更にその売買ルートに狩野が絡んでるってとこまで判明してるのに、今さら俺たちが何を押さえればいいのかって方が疑問なんですが」
京の言い草は先刻の城戸よりも、更に嫌味と皮肉の利いたものだった。金熊の配布した資料には、その手の情報が一切記載されていない。被害状況、それに関する全ての詳細、ドラッグの頒布状況、それに関する全ての詳細、書かれていてよいはずの内容が何一つない。あるのは狩野製薬の企業パンフレットをコピーしたとしか思えない会社概要と重役の紹介だけだ。
「証拠だよ。……物的証拠」
金熊がひと際長い嘆息で疲労を顕わにした。これぞ「THE 板ばさみ」である。
「……ないんですか、ここまで詰めといて」
「そう、ない。だから全社で狩野の関連ビルを監視して、そこに胡散臭~い笑顔で載ってる上役たちと接触した者を本社へ報告する。以上、これが本日からの我々の業務!」
最終的にはやけくそに締めた。金熊は覚悟していた。絶対に、十中八九突っ込んでくる奴がいる。荒木か、京か、素直に聞いている素振りのシンか。
「し、証拠品の押収じゃないんですか……」
予想外というか、それを口に出したのは小雪だった。思わず金熊も言葉を詰まらせる。
「白姫くん、聞いとったかね。我々の業務は『狩野の上役と接触した者を、逐一、リストアップして、本社に報告する』以上だっ」
金熊は困ったとき、技巧に走らずごり押しする。つまり今、極上に困っている。これは察して見て見ぬふりをするのが優しさというものだ。銘銘に伸びをしながら席を立ち、重い足取りでローテーションの指定箇所に向かう準備を始めた。
京もうなじを掻きながら立つ。呆ける小雪の頭に軽く手を置いた。
「華々しいのは本社の精鋭陣が根こそぎ持ってくからねぇ。ま、俺たちは俺たちの業務をやろう。地味で退屈そうだけどな」
「浦島、聞えよがしに言うなっ」
歯ぐきをむき出しにして怒る金熊に、京はいつも通りの愛想笑いでへらへら頭を下げていた。
小雪は何故かその光景に、いくつかの違和感を覚えた。ざっと思い返しても、どの時点でも通常運転の京だ。それがやけに造られたもののような気がする。
彼は何を焦ってるんだろう──根拠もないのにそんな考えがよぎる。それはひどく、小雪を落ち着かない気分にさせた。

メールやLINE,Twitterの返信に使えるネタ画像!誰かを煽るレスにも使えるよ!!

一体誰が元凶で、事態がここまで収束不能に膨れ上がったのか──。
浦島京介を始めとするスプラウトセイバーズ藤和支社保安課のメンバーは、さして広くもない課内にひしめき合って、揃いもそろって微動だにできずにいた。許されるのは、固唾をのむことくらいである。とりわけ京は、しきりにそればかりを繰り返していた。
「指一本でも動かしてみろ……こいつの頭から脳みそ引き摺りだしてやる……!」
京の寝癖頭を押さえつけて、男はサバイバル用の折りたたみナイフを突き付けていた。男は、というにはいささか幼さの残った顔立ちだった。しかし少年は、と言うにはその目はあまりにも淀んで見えた。
京は自身を人質にとられながらも「いやいや、俺の頭の中からは脳みそは出ないから」だとかの的確かつどうでもよいつっこみをかかさなかった。無論、胸中での話だ。実際は、ナイフの刃先と男の顔との間で視線を泳がせながら、思いきり歯をがちがち鳴らしている。そして時折、恨みがかった目を、一向に進む気配のない「だるまさんが転んだ」状態の同僚たちへ向ける。皆、冷や汗を流しながら神妙そうな顔つきをつくっていた。
京には分かる。連中はこの表情の裏で、そろそろあくびをもらしはじめている。荒木と城戸は、先刻から見えない位置で互いの肘を小突き合っているし、シンは振動し続けるモバイルが気がかりでジャケットの裏ポケットを気にしてばかりいる。極めつけはこの女だ。
「はーー……」
法務課主任、辰宮乙女はくっきりと縦じわの刻まれた眉間をほぐしながら、これでもかというほどオーバーに溜息をついた。悪びれもせず。
「何だよ、それ……。くだらないって、言いたいわけ」
「あら、意外に察しがいいじゃない」
(お~と~めぇぇぇぇ~……!)
膠着状態は打破したいが、荒療治すぎる。京は口パクで懸命に訴えたが、乙女の視界には入っていないようだ。入っていたとしても餌を催促する金魚が口をぱくぱくさせている程度にしか映っていないだろう。
冷たい汗で、京の背中はぐっしょり濡れていた。血の気は当に引いている。朦朧とする意識を繋ぎとめたのは、何かが切れる不吉な音だった。
「お前らの、せいだろ?」
切れたのは、かろうじてつなぎとめていた男の理性だ。
「お前らのせいで全部無くなったんだろ! 今までの分も、これからの分も、幸せ全部お前らが奪ったんだろうが! ……返せよ。二人分、死んで返せ!」
男の意識が京を離れ、京に突き付けていたナイフを離れ、乙女の冷めた眼に吸い込まれていくのが分かった。それでも京はしっかりと羽交い絞めにされたままだったから、一気に形勢逆転とはいかない。薄れゆく意識の中で、京はただひたすらに「刺さないでください」と小さく呟くだけだった。

名目上は、麻薬事件における本社との連携捜査であり、確かに聞こえは良い。しかし実際は本社が持つべき案件、もっと言えば本社はおろか、金熊のこぼしたとおり警視庁が抱えるべき事件のとばっちり捜査であった。もっともっと正確に言うならば、これは捜査でもない。
手狭な割に十階建と、縦長い造りのショッピングビル。その九階にあるカフェレストラン「赤りんご」、その窓側カウンター席からちょうど、狩野の事務所ビルの出入りが一望できる。小型の望遠鏡を使えば限定されているとは言え、いくつかの室内も監視することができた。
小雪はかれこれここで三日間、タウン誌を広げて、この『秋の新作スイーツ大特集!あつまれ、マロン、メープル、むらさきいも!』のページを眺めている。マロン、メープルまで横文字できておいて何故最終的に純和風の『むらさきいも』で締めくくるのか気になって仕方が無い。それでも、三日同じページを眺め続ければその違和感もどうでも良いものになりさがっていた。
不躾に小雪の隣の椅子がひかれた。そこにはつい数分前まで荒木が頬づえをついて座っていたのだが、今、大あくびと共に腰をおろしたのは京だ。
「いつまで続けりゃいいのかね」
開口一番これである。やる気は皆無だ、椅子にこれみよがしに浅く腰かけて、ずぶずぶと斜めに沈んでいく。
「見る?」
小雪が指さしたのは例のスイーツ特集。流石の京もこれには苦笑しか返せない。
「付箋なんかつけちゃって」
「そうじゃなくて。今日分のリスト。昨日よりは出入りが多いみたい」
雑誌の下にB5のペらいち用紙が敷かれていた。良く見れば、スイーツ特集の前のページには狩野製薬の重役たちの顔写真が挟みこまれている。京の目が、即座に何かあり得ないものでも目にしたかのように訝しげに変わった。何か言いたげに小雪の顔をしばらく凝視した後、結局何も言わずにうなじをさすった。
京は少し困ったとき、よくこの仕草で自分を誤魔化す。今度は小雪が、観察対象のへちまでも覗きこむように上目遣いに見やった。
「なんか……未だかつてない熱い視線を感じるんだけど」
「気のせいよ。それより何か頼んだら? 一日一杯までは経費で落とせるって」
「それも何て言うか、おかしな話だよな。一日中居座るのに一杯までって」
言いながら軽く片手を挙げると、ほとんどなじみになりつつあるアルバイトの女性がすぐに駆け寄って来た。
「おねーさん、俺、今日コレ。この『赤りんご特製赤くないりんご5種の生しぼりジュース』」
アルバイトの女性は快く返事をすると、「生しぼりおひとつ」と端的に復唱して踵を返した。カフェあるあるなのだろうか、客に長々しい(時にはこっぱずかしい)商品名を言わせる割には店内部では適当な略称が定められている、あのパターンだ。京は全く以て気に留めてもいないが、小雪は明日注文するつもりでいたそのジュースのことは「生しぼり」で通じることを学習できたことに密かに礼を言った。
「こうしてるとさー。仕事の合間に抜け出してランチに来てる、社内恋愛カップルってかんじ?」
「え? ううん? 全然?」
小雪は笑顔全開で、全く動じることもなく全力でかぶりを振った。切り返しの早さといい切り捨て感といい斬新である。などと感心している場合ではない。思い返してみれば、この三日間、こうして小雪の隣を独占している状況下でまともに会話が弾んでいないではないか。おかしい、おかしすぎる。社員旅行以降、二人の距離は劇的に縮まっていたはずだ。
(……テレカクシ!)
すぐに単純明快、腹落ちする結論に至った。なんだ、そうか。それなら仕方ない。もう少しこの状況を楽しむくらいの余裕を持てということだろう。神は意外にまどろっこしい試練を与えるものだ。
青ざめたり目を見開いたり、最終的に極上に気持ち悪いふにゃふにゃした笑みを浮かべる京を、小雪は言うまでもなく冷ややかな目で遠巻きに見ていた。
その遠い視線が、カウンターの一番端の席の男を捉える。小雪がここに座り始めたときから既に居座っている若い男だ。明るく色を抜いた髪は肩の長さまで適当に伸ばされている。小雪と同じくらいか、それ以上に長いかもしれない。だから何だと言われればそれまでなのだが、その男の様子が少しだけ気になった。スマートフォンの液晶をタップする、その指圧が必要以上に高い。コツコツという音がこちらの席まで届くほどだった。
「なんで出ない……! くそっ」
何度か舌打ちをする。それに気づいて頭がお花畑モードだった京も、何気なく視線を向けた。
「遅い、遅い、遅い……! なんでなんだよ、ちくしょう」
タップ、機器本体を耳もとへ、舌打ち、タップ、少し前からこの一連の流れがループしている。これにたった今リズム隊が加わった。すなわち、超高速貧乏ゆすりである。
京はできるだけ無表情を保ったまま、顔の向きを再び窓の外へ戻した。小雪にも暗にそうするように促す。障らぬ神に何とやらだ、最善の選択はこのまま無我の境地で「赤りんご特製赤くないりんご5種の生しぼりジュース」の到着を待つことであろう。
「あの人」
小雪が話を振ろうとするのを止めるべく、京は小刻みにかぶりを振った。それをさっぱり無視して小雪は京の袖を軽く引く。彼女の視線は、猛烈タッピング男の方ではなく、自分たちの眼前にある一枚張りのガラスへ向けられていた。
「あの人、毎日のように居るのよね」
ガラスには、店内の様子が隅から隅まで反射している。入り口付近で会計を済ませようとしている若いカップル、それぞれにブランドのショッピングバックを下げておしゃべりに夢中になっている女性三人組、営業途中に寄ったのだろうかネクタイをゆるめながら注文を述べる男性、そして入り口から入って角の席に座っているロイド型サングラスをかけた長身の男。
誰のことを言っているのか、聞く必要はなかった。小雪が言うのは十中八九この男のことだろう。位置的には、京と小雪の座る窓際カウンター席のちょうど真後ろにあたる。京は相手に悟られないように意図的に視線を泳がせながらも、神経を研ぎ澄ませた。
小雪が言いたいのは形式的なそれではない。この男が足しげく通うには、この「赤りんご」というカフェはいささか不似合いだ。それは自分たちにも言えたことだったが、彼らには目的がある。同じ原理で言えば、このロイド型サングラスの男にも何か理由がありそうだ。賑わう店内でたった独り、メニューの中からは探さなければ見当たらないようなブラックコーヒーを注文して、窓を凝視する理由が。
(窓──……)
ガラスには、店内の様子が隅から隅まで反射している。会計を済ませて店員に見送られるカップル、パフェをつつきながらモバイルいじりに没頭する女性三人組、食事の前に既に一服を済ませようと灰皿を引き寄せる営業マン、そして訝しげな表情を浮かべて窓ガラスを覗き込むスプラウトセイバーズの若い男と女。
窓ガラスの中の世界で視線が合った。サングラスの奥で、その「目」は確かに京を捉えていた。
ガタッ! ──和みと癒しの空間に、椅子を蹴る音はひどく異質なものとして響き渡った。京ではない。確かに彼はそうしようと腰を浮かせていたところだったが、それよりも早く、例のカウンター隅の男が立ち上がっていた。談笑を交わしていた客の注意を一気にひく。
「うわああああああ! なんでだよぉぉぉ! 出ろよ! 出ろぉ!」
スマートフォンを握りしめたままの拳をカウンターに打ち付ける。凄まじいまでのタップだ、などと悠長に構えている場合ではなさそうだ。
「頭がイテェっ! 嫌ダぁぁ、イやだァ! アアアァァァァアア!」
男は奇声を発しながら、舞台役者のように頭を抱えて体ごと左右に振りまわした。かと思えば一昔前の芸術家のように頭髪を掻きむしりだす。彼の発する声は、悲鳴というよりもはや断末魔に近い。それが周囲に与えるのはもはや緊迫感ではなく、ある種の好奇心だった。
「ウワアアアア、痛えええ! 痛ぇよおおお!」
男の一人舞台は早くもクライマックスを迎えていた。眼球を、躊躇なく両手で押さえこむ。取り出そうとでもいうのか、中指の第一関節がすっぽり埋まるほどに瞼の隙間から指を食いこませていた。
「き……きゃあああああ!」
「うわー! 何だ、救急車呼べ! 救急車!」
ここでようやく真っ当な悲鳴が上がる。皆、我先にと席を立ち、苦しみもがく男と距離を取った。そんな中で、京と小雪だけが真逆の行動をとる。床にうずくまって絶叫し続ける男に駆け寄った。
「おい、あんた……! 小雪! 両手押さえてっ」
小雪は返事の前に迅速に行動に移してくれる。しかし小雪の全体重をかけても男の動きを完全に封じることはできず、結局京が男に馬乗りになる形で無理やり床に押さえつけるしかなかった。
「京っ、ちょっと、何するつもり」
「手、離すなよ……! は~い! ちょっとお兄さん、おめめ見せてね~!」
口調は子どもをあやすようだが、京はほとんど全力で男の首をねじってその眼球を覗き込んだ。白眼は血走った上、涙とも血ともつかない赤色の液体にうずもれている。まるで焦点の定まらない黒眼──アイ細胞は、時折生き物のように赤い海の中でうごめいた。その場所を棲み処に無尽蔵に増えるアメーバのようでもあったし、息を殺して夜を待つ吸血蝙蝠のようでもあった。
京は息を呑んだ。ひとつだけ確かなことがある。
「小雪、カンパニーに連絡してシステム課の誰か応援に呼んで。こいつ、このままじゃやばいぞ」
「ブレイクしてるのよね……?」
「“ただの”ブレイクならいいけどな」
京はアイ細胞の確認を止め、男を抑え込むことに集中することにした。と、既に男に暴れまわる意思も体力も残っていないことに気づく。小雪に目で合図して、このまま三人ねじりパン状態から離脱するように指示した。
小雪は抜け出してすぐ、スーツの内ポケットから携帯電話を取り出すと短縮ボタンを押した。遠巻きながらも分厚い壁となった野次馬連中に律儀に頭を下げながら店の隅に移動した。
「イテェよぉ……死にたくない……! シニタクナイよォオ!」
「心配すんな、すぐアイ細胞のスペシャリストが来るから。姿勢を楽にして目は閉じてろ」
ともすれば男は自らのアイをえぐり出そうとする。それを阻止すべく、両手だけはスーツの上着で縛らせてもらった。
(異常……だよな、この濁り方は)
考えられることはいくつかあったが、どうしたって件のドラッグの存在を勘ぐらずにはいられない。もしこれが、ブレイクを誘発するクスリの仕業だとしたら、事態は京たちが考えているよりも深刻かつ急速に展開しているのではなかろうか。そんなことを思っていると、ふと悪寒が走った。視線を上げて、小雪の姿を探した。
「何なに、ブレイクスプラウトってやつ?」
「うわー、マジだ。初めてみた。なんか、凄くない? ドラマみたい」
野次馬が増殖している。店内の客だけではない、このショッピングビルの上から下から、興味本位で集まった連中が人垣を作っていた。
「見て。動画撮ったー」
「あの人ってさー、あれ? セイバーズっての?」
「なんか結構やばくないかぁ」
「バグってるよな、完全に」
いろいろな人間の様々な声が頭上を飛び交っていた。ほとんどが好奇の目で、ごく一部に悪意てんこもりの侮蔑の眼差しが混じる。
久しぶりの、とてつもない不快感だ。不幸中の幸いだったのは、取り残されたのが自分で小雪でなかった点である。これが逆だったらもうひと悶着平気で起こっていたに違いない。胸をなでおろしながら、京はできるだけ考察に集中するよう心掛けた。そうすることである程度の騒音はシャットアウトできる。
「救急車って呼んでんの?」
──そう言えば。
「さあー、さっき女の人が電話してたっぽいけど」
──あの、ロイド型サングラスの男。
「ブレイクってさぁ、結局治らないんでしょ」

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こうして一泊というか半泊というか、慌ただしい慰安旅行は終章を迎えた。行きと違って帰りのバスの中は嘘のように静かだ。五月蠅い連中を含めたほとんどの者が、ここぞとばかりに居眠りを決め込んでいるのが主な要因である。豆塚のあげる高いびきに耳を塞ぎさえすれば、非常に快適な静寂の空間だった。
カシャッ──そこへ響く、モバイルのシャッター音。シンが座席から身を乗り出して小雪の寝顔をおさめたところだった。起きていた社員は全員目を見張る。
「小雪さんの寝顔ー。500円でデータ送信受付中ー」
ガタガタと音を立ててシンの席に群がり始めるシステム課社員一同。荒木が迷惑そうに顰めつらを晒し、その横で城戸が笑う。いつもの平和な光景だ。しかしいつもとは決定的に違う。一番先に他者を押しのけてきそうな男が、今回に限っては悠長にふんぞり返って座っているではないか。それも締まりのない笑みをにやにやと浮かべて。
「めずらしいね。いいの?」
シンがわざわざモバイル画面の中にいる、あどけない寝顔の小雪をちらつかせてきた。
「んー? べーつにー」
京は一瞬だけそれを視界にいれたが、すぐにまた思い出し笑いに没頭した。
「気持ち悪ー。今に始まったことじゃないけど」
座席の肘置きにひたすら積み上げられる500円硬貨を、シンはてきぱきと回収してきぱきとデータを送信した。
京は思い出し笑いを噛みしめながら、あるひとつの確信を持ち始めていた。この寝顔は500円払わずとも近い将来独り占めできる気がする。昨晩のやりとりを思えば──当然、京は小雪の最後の台詞をこそこそ息を殺して聞いている。あとからあとからこみ上げてくる笑いに顔全体を緩ませて、京はひたすら根拠のない幸せな時間を抱きしめた。


「こげ・・・イギィイイイ」 「イイイイイイイイイイイイ」

l/
キ ャ ン

ジェインが『巻き戻し』を行う。 水中だろうと燃え続けるダミナが、死んでしまう前に・・・
ジェインの魂は「肉体」へと『戻り』、同時に潰された肉体も元に『戻る』。新稲にひきずり下ろされたのを、
なぞるように元の位置へ『戻って』いく。

ギュルギュルギュル

「・・・・・・・・!!」

ダミナも『戻る』。スタンドの秘密を喋って燃える前に、『戻る』。セリフを逆に喋りながら『戻る』。


ハ ッ

ダミナが出現させた『水槽』も『巻き戻』って消滅する。



(ミッキー)
巨大円盤(天井だったもの)にポッカリあいた穴から、『上空』に目をこらすミッキー。だが・・・・・・

ギュルギュルギュル

時は再び『巻き戻』された。ただただ、記憶と行動が過去に遡っていく。
ミッキーはレスが『不可能』なので飛ばす。次ターンはレスをしないこと。


Message to Kinshiros Steeler Page

↑2018/10/01(月) 22:56:43
むしろそれらのケースよりも覚醒のための設定がたくさんついてるくらいだろう
本人の資質が影響する念獣が最強クラスってのも事前に示してるからそりゃ本人も才能あるだろうし
ツェリの時もまず念獣がヤバそうってのを先に出してから才能あるって設定を出した
無自覚とはいえ念獣って憑かれた王子が発現した能力なんだろ
ちょっと能力使っただけで疲れて使えなくなるモモゼやフウゲツとは明らかに格差あったし
ぶっちゃけ納得し難いってのはキャラと設定の好みじゃねえの?
蟻のキャラと設定なら好きだけど王子のキャラと設定は好みじゃないから念の才能あるのは萎えるとか
人外の化物が生まれながらのチートならいいけど王族血統なだけの人間がチートなのは嫌だとか

HOLOHOLO160 まあそう言われればそうなんだが。こりゃまいったなあ…

金熊への報告は一通り京が済ませた。小雪が宿に帰ってまずすべきことは、報告より入浴だ。本人もそれを理解していたから、露天風呂へ直行した。頭の先からつま先まで全身が湖くさい。なんというか、オオカナダモくさいのだ。
深夜の露天風呂は小雪の貸し切り状態だった。本来は既に入浴時間を過ぎているところを、女将の好意で開けてもらったからである。昼間に楽しめる雄大な景色とやらは拝めなかったが、代わりとばかりにイルミネーションショーのような星がちかちかと輝いていた。ありていに言えば宝石をぶちまけたような、そういう空だ。思わず感嘆を漏らしてしまうような。
「は~~~、美しいね~~。素っ裸で星空独り占めっていうのも悪くないな~」
小雪は漏らしかけた感嘆を飲み込んだ。ごく近くで、つまりはこの竹細工の壁の向こうで先に感嘆を漏らした輩がいる。言うまでもなく、京だ。何度か無意味に「はあ~」を繰り返した後、惜しげもなく演歌を歌い出す。貸し切り状態とは言えとことん自由に振舞う京のせいで、女湯で一人、小雪は息を殺す羽目になった。結局漏らしたのは疲労の嘆息だ。そしてその微かな息遣いを目敏く拾うのが奴だ。
「あれれ~。先客ありだったかな~! 星空独り占めだと思ったんだけどな~!」
(わっざとらし!)
「課長がさー、褒めてたよー。フットワークの軽い良い部下を持って幸せだってさー」
「えっ、ほんとに?」
ああ、しまった。しまりすぎた。まさかこんな単純な手にひっかかるなんて。苦悩しても後の祭りである。
「あれ! その声はっ! まさか小雪!」
「……その演技、そろそろ腹立つんだけど」
大根役者の一人舞台のようで聞いている方が恥ずかしい。小雪は諦めて、改めて大きく嘆息するとボルボックス臭い体を洗い始めた。覗き魔も、まさか壁を乗り越えては来ないだろう。
「まだ怒ってんのー……?」
今度はいささか、不安そうな声が響いた。
「別にー。ただ、お風呂くらい一人でゆっくり入りたかったなーって思ってるだけー」
「やぁだ小雪ちゃんったら! それ二人で一緒に入ってるみたいじゃなーい?」
無視しよう。少し度を超えてうるさい蠅が、壁の向こうで騒いでいるだけだ。そのまま飛んで火に入れ。
そのまま小雪が徹底して黙っていると、京の方も途端に静かになった。水音だけは微かに聞こえるからまだ居るには居るのだろう、無言は無言で不気味である。それが五分、十分と続くとさすがに一抹の不安を覚えた。まさかのぼせて沈んだとか。
「小雪ー」
その心配は0.5秒で粉砕した。気だるさマックスで名前を呼ばれると返事をするのも億劫だ。しかし京は、小雪の反応を特にまたずに続けた。
「今日、よく頑張ったな。ゆっくり休んで、しっかり疲れとれよ」
大きな水音がした。おそらくそのまま脱衣所に向かったのだろう。珍しく聞く、普通の先輩のような台詞だ。小雪は少し迷った末、普通の後輩の台詞を返すことにした。まだ壁の向こうに居るのかは分からないが、聞いていないならそれでもいい。その方が、いい。
「ありがとう、信用してくれて」
しばらく待ったが、京の反応は無かった。それがどことなく寂しいようで、大部分はほっとした。少しのぼせてきたように思う。小雪は振り返ってもう一度、満天の星空を見た。ありていに言うと、宝石をちりばめたような──。

4 【なぁ】チームさにわのドキドキ本丸探索【スケベしようや】結の上

]
[ なんだかわからないけど水分がなくなったから めくれる ]



>>(新稲)

ギュルギュルギュル

同じ行動を繰り返そうとした新稲だったが、まだ『巻き戻し』は終わっていない・・・。
「円盤の下にひきずり下ろした時」より、さらに前にさかのぼる気だ・・・・・・。


ググ・・・

『巻き戻し』中のジェインが、ひとさし指をたてる。

ちっ、ちっ、ちっ

指を左右にふる。
『巻き戻し再生』であっても さきほど()と同じ意味を成すハンドサインだ。

「○▽×・・・・」

府川の「逆さ言葉」が聞こえてくる。ミッキーも同様だ。
目の前でミッキーの行動が『逆再生』されていく。
『パパヤ』があけた穴、巨大円盤の穴が破片が集まり、ふさがっていく。

グ・・ ピタアア

そこで『巻き戻し』が終わった。
これは・・・「巨大円盤をつくった直後」までだ!そこまで『戻』った!



(十六夜)
ダミナからの反応がない。

「○▽×・・・・」

まだ『巻き戻し』中だったようだ。わからねー逆再生言葉をしゃべっていう。

グ・・ ピタアア

『巻き戻し』が終わった。
これは・・・「巨大円盤をつくった直後」までだ!そこまで『戻』った!



>>(ミッキー)
ミッキーの肉体と記憶は、の時点まで『巻き戻』された。
なにかキッカケがない限りはと同じレスをすること。

[補足]
時点での『ミッキー』の認識は・・・
「巨大円盤」を十六夜と支えた直後。これから頭上を拳でブチ破ろうとするところ。

『ミッキー』視点からみた周囲の状況は、とほぼ変わらない。例外は以下の通り。
・スコーシオが、いつの間にか倒れている。
・馳地の位置が(移動したため)少しばかしズレている。



>>(府川)
府川の肉体と記憶は、の時点まで『巻き戻』された。
なにかキッカケがない限りはと同じレスをすること。

[補足]
時点での『府川』の認識は・・・
逃げるダミナを追いつめるところ。
ダミナが喋った『巨大ワニ・マハンバ』について、自分も知っていると喋ろうとしているところ。

『府川』視点からみて、周囲は以下の異変がみられる。
・ダミナのすぐ傍にいたマールブルグが、店の端へワープしている。
・府川の背後にいた『コーンホリオ』が、マールブルグの傍にワープしている。

宇宙ならそうなんだが地上はナ…今やバイカスおるし変形したら死ぬ ..

「白姫さんはさぁ、保安課みたいな野蛮な部署より、うちとか、オペ課が向いてると思うんだよねぇ」
歩き始めてものの数秒で、豆塚が突拍子もないことを言い出した。この男は終始酔っているのかそうでないのか分からない。終始というのは、当然就業後バスに乗り込んでから今の今までという意味だ。
「あーまあね。それは俺も思うね。保安課に綺麗どころが揃う意味が分からないというか」
「青山さんを引っ張った時点で、なんか作為を感じるよなぁ。あ、知ってる? 青山さん、昔はオペ課にいたんだよ」
「一応……知ってはいますけど」
話を振られたようなので、先導する小雪も肩越しに振り返って応答した。とにもかくにもシステム課の連中に緊張感は欠片もない。夜の散歩に出てきたノリである。
「それがまさか保安課の、地味~な経理業務に異動になるなんてなぁ……」
「それってあれだろ? 城戸と浦島が裏で一枚かんでるって噂の」
よく、喋る──別に聞きたくもない噂話に、小雪は反応せず、周囲に目を配りながらただ歩いた。
「だいたいあそこは、一癖も二癖ある奴ばっかりだろ。中でも浦島が一番何考えてるか分からなくて怖いけどね、俺は」
「あいつ、年がら年中ブレイクしてるようなもんだろ」
小雪は振り向かない。だから誰がどういう風にその話をしているのかまでは掴めなかった。振り向こうかどうかを数秒、躊躇った。“ブレイク”という言葉が、まさかこんなところでこんな風に使われるなんて思ってもみなかった。胸が騒ぐのは、自分がスプラウトだからか、スプラウトセイバーズだからか、それとも話題に上ったのが浦島京介だからか、判断しかねる。それでも確かに胸がざわついた。
「お前らさ。言っていい冗談と悪い冗談があるだろ。プライドってもんがねーのかよ、仮にもセイバーズだろーが」
小雪は、今度こそ立ち止まって振り返った。豆塚だ。他の連中はまだ酔いが残っているせいもあるのだろうが、苦笑で誤魔化している。
「豆塚さん……」
「……今、白姫さんの中で俺のポイントが確実に上がったのが分かっちゃったわ……」
「あの──」
「そうだっ、忘れてないよね!? 王様ゲームの命令はまだ有効だからね!?」
「──何か聞こえませんか?」
小雪はここにきて一つ悟りを開いた。豆塚登の対処法、その一。ひたすらスルー。ちなみに、何か聞こえたのは本当だ。全員で耳をそばだてた。
「子どもの、泣き声とか」
聞こえたままを小雪が口にすると、何人かが目に見えて青ざめた。深遠の闇、暗い森の中、微かに響く子どもの泣き声。状況だけを並べるとかなりハイレベルのホラーだ。が、当初の目的をきちんと把握していれば、喜ぶべき状況である。
「やっぱり湖の方!」
小雪は確信を持ってスタートダッシュを切った。少女らしき泣き声は次第に大きくなる。そこにもう一つ別の「鳴き声」が輪唱してきた。
「わああああああん! 怖いよぉぉ、ママぁ、暗いよぉぉぉ!」
遊歩道の終わり、急に道が開けて、どうやら湖畔のボート乗り場にたどり着いたらしいことが分かる。夜は管理者がいないため電灯ひとつない。黒く広がった湖面は、少女でなくても十二分に恐ろしかった。
「居た! 子ども!」
「そして犬!」
小雪の絶叫にかぶせて、豆塚が見たままを補足した。漆黒の湖の中央に、おそらくボートであろう頼りない物体がゆらゆらと揺れている。その上に喚く少女、と何故か犬がいる。少女の喚き声に合わせてすがるような鳴き声をあげていた。
「雑種だな!」
「ああ、しかも混ざりに混ざって何ベースか判別できないな……あの座り方から見ると、オスか」
「尾の下がり具合からみても、水を怖がるタイプの犬みたいだな。湖面に放り投げれば本能で泳ぐかもしれんが……」
システム課の面々は各々前に進み出て、早速ターゲットについて分析を始めた。彼らの興味の対象は主にお犬様である。その横で犬を抱きしめたまま泣き喚く少女は、一瞬で対象外にされたようだ。
「──じゃなくて! 犬の詳細なんか今はどうでもいいでしょっ。助けないとっ」
「助けるって言ってもねぇ。ボートはあれ一艇だけみたいだし……」
なおかつそのボートにはオールが見当たらない。だからこそああやって長い時間湖面の中央にぷかぷか浮かんでいるのだろうが。
「何はともあれ、まず犬を投げるのが先決じゃないか?」
「何はともあれ助けるのが先です! もうっ! いいです、私行きますから!」
なるほどここにきてようやく、京の言っていた言葉の意味を解した。システム課だけでは心許ない──つまり、こいつらは全く以て現場では役立たずということだ。
言うが早いか小雪は浴衣のまま湖へ飛び込んだ。
「うわぁ! 白姫さんっ」
どれくらい深いのかとか、水はそこそこ綺麗なのかとか、不安要素は全て後回しにした。一歩間違えれば入水自殺希望者のようだが、飛沫を上げてクロールする入水自殺者もおるまい。システム課男子一同は、小雪の豪快な泳ぎっぷりに皆感嘆をあげ拍手さえした。
しかし、ボート上の少女にしてみれば、なりふり構わず救助に向かう小雪は猛突進してくる得体の知れないモンスターにしか見えない。少女と犬は、再び互いに抱きしめあって更なる大絶叫を上げた。
(なんか……ここのところ子どもに泣かれてばっかりのような気がする……)
ひたすら水を掻きながら、フェアリーランドで保護した藤木亜里沙のことを思い出していた。子どもが本気中の本気で泣き始めたら、凄まじいまでの騒音となる。あのとき身をもって実感したはずだったが、今回はそれに犬の「スゥー・・・・・・ン」という効果音までプラスされているから厄介だ。
「白姫さーん、ふぁいとー」
「おーえす。おーえす」
「すぅーー……ん」
「うわあああああ! ママぁぁ! パパぁぁ! 怖い、怖いよぉぉ!」
「白姫さーん、負けるなー」
「おーえす。おーえす」
少女、犬、システム課。少女、犬、システム課。繰り返される円舞曲、どの楽器も耳触りだ。
「ママァァァァ! 人食い鮫があああ! 人食い鮫がぁぁぁ!」
(冗談でしょ!)
湖の中腹で、小雪は青筋を浮かべて立ち泳ぎをした。案外に深い。ボートが転覆したら少女も犬も十中八九溺れまくるに違いない。しかし今のところ重視すべきは、起こり得る最悪の事態の想像ではなく、現在進行形の少女の混乱だ。
そもそもどうしてこの少女は(そして犬は)こんな夜更けにボートに乗って、うまいことオールを失くして、湖のど真ん中で往生しているのだ。罠か。助けた瞬間、湖に引きずり込まれるんじゃないだろうか。いやいやいや。自分の考えこそ混乱していることに気が付いて、小雪はずぶぬれになった頭を何度か振った。そこへ、気だるい指示が飛ぶ。
「小雪ー! そのままゆっくり平泳ぎでー!」
岸を見ると、京とシンが手を振っていた。
「できるよなー! 平泳ぎー」
小雪は肯定のサインとして右腕だけで半円を作った。なるほど、人食い鮫に間違われないためには平泳ぎが有効らしい。早速実行すると、今の今まで馬鹿みたいに繰り返されていたあの負のロンドがぴたりと止む。少女は訝しげに小雪の姿を見つめ、犬は状況に飽きたのか首元を掻き始め、システム課の連中は黙り込んだ。
「で、なんでお前らが行かねーんだよっ」
湖面から一旦目を離して、京は一番傍にいたシステム課のひとりの後頭部をはたく。
「……駆けつけてみたら、笑っちゃうくらい出来上った状況でしたって、なんか最近もあったような……」
「僕それ、記憶から抹消してるから余計なこと言わないでよ」
シンが冷めた目で踵を返す。
「タオルとってくる」
「二人と一匹分な」
「あれ、めずらしい。行かないの」
「行かないよ。必要ないでしょ」
つまらなそうに生返事をしてさっさと引き返すシン。京は再び真っ暗な湖でうごめく影に視線を集中させた。ボートの横まで辿り着いた小雪が、何か少女に話しかけているようだったが、このあたりで心配する要素はまずない。予想通り、少女が小雪にしがみつくのが見えた。予想外だったのは犬まで小雪にしがみついている点だ。
「犬の野郎……! なんて羨ましい……っ」
「てめぇの嫉妬は犬にまで及ぶのかよ……」
豆塚が呆れかえってつぶやく。いよいよ酔いは醒めたようだ。そんな豆塚はとことん無視して、京はひたすら戻ってくる小雪の様子を注視した。頭が巨大化して見えるのは、おそらく例の羨ましい犬が乗っかっているせいだろう。岸まで5メートルという辺りで、自分の足が届くのを確認すると、小雪はまずオシャレ過ぎる帽子を振り落とした。
全く手を出さないつもりで岸にしゃがみこんでいた京だったが、結局気が付いたら膝下まで湖に浸かっていた。両膝に手をついて呼吸を整える小雪に手を差し伸べる。残念ながらすぐにはとってもらえないが。
「一応称賛と労いの手なんだけど……」
思いきり訝しげな視線を送られてから、ようやく手をとっていただけだ。このまま全身ずぶぬれの彼女を抱きしめてしまいたいところだが、ここは我慢だ。
「……ひょっとして、私の力量試したりした?」
「俺が? まさかっ。単に信用しただけだよ」
そういう割には中途半端に迎えにきているあたりが腹立たしい。戻って来たシンからタオルを渡され、小雪はそれをぐるぐると肩に巻いた。横では、犬(雑種)が何事もなかったかのように全身を震わせて水切りをしている。救出した少女は、シンの顔を見るなり安心したのかまた泣きだした。ちゃっかり抱きついている。
「なんかどっと疲れが……」
「帰って温泉にでも入ろうかね」
京が苦笑するのに合わせて、小雪にも自然と笑みがこぼれた。

「残念やったなぁフェイトちゃん、まあ、これからいくらでも機会はあるよ」 ..

チッ♪チッ♪()
| |┃
┝ ミッキーが、『上向きのレンズ』を破壊()
┝ 十六夜が、スコーシオを攻撃して気絶させる() |┃
| |┃
┝ 新稲が、ジェインを円盤の下へとひきずりおろす().....
| ジェイン死亡() |┃
| |┃
┝ ダミナが、『水槽』を出現させる。府川が、 |┣ 『巻き戻』されて無効。(チクショオー)
| 丸太のような足蹴りでダミナの鼻骨をつぶす() ......
| 馳地の下半身を焼く炎が消える。() |┃ おきた事柄は巻き戻らない。新稲自身の行動も同じ。
| |┃
┝ 新稲が、ジェインの遺体頭部を破壊()
| |
┝ ダミナが、ジェインの弱点を話す。
| 秘密を漏らしたペナルティで燃える() | しかし事柄がおきた時間ごと『巻き戻る』ので『無効』になる。
`''―→―――――――――――――――――――――→―''´

時は『巻き戻』される