:ステロイドは細菌性髄膜炎患者にベネフィットをもたらすか? ..


はじめに
わが国の『細菌性髄膜炎の診療ガイドライン』1)がすでに作成されており,そのなかで,インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)ならびに肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の髄膜炎に対して,ステロイド薬を投与することが推奨されている。しかし,現在でも細菌性髄膜炎にステロイド薬を使用するかどうか? どのような患者に投与するのか? という議論は続いている。細菌性髄膜炎は生命にかかわる重篤な感染症であり,かつ比較的症例数の少ない疾患であるため,コントロールスタディが非常に困難な疾患である。そのため,ひとたびガイドラインができ上がった場合,その内容と違うことを行うことは,よほど確かな新しい知見でもない限り困難である。そのような状況下でなお疑問が生まれるとすれば,その原因は近年報告が増えているメタアナリシスの解析結果に惑わされているのではないかと推測される。なぜ問題になっているのか整理して考えてみたいと思う。


化膿性髄膜炎におけるデキサメタゾン療法: G-CSFとの関連について


髄膜炎菌性髄膜炎は第2種の感染症に定められており、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止とされている。
また、以下の場合も出席停止期間となる。
・患者のある家に居住する者又はかかっている疑いがある者については、予防処置の施行その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
・発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間
・流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間

ヒブと肺炎球菌による髄膜炎は赤ちゃんがかかりやすいのですが、10代後半の年長児がかかりやすいのが髄膜炎菌による髄膜炎です。米国や英国、オーストラリアへの留学(特に入寮する場合)や、国内でも高校や大学の運動部などで寮生活をする場合は、感染リスクが高くなりますので、髄膜炎菌ワクチンの接種をおすすめします。

初期研修医〜一般内科向けに作成したスライドです。髄膜炎菌の部分は曝露後予防など少し踏み込んでいるので、興味があれば。

理論的に効果があるはずだという見解と,場合によっては患者の状態を悪化させる可能性があるという見解がある。

1.ステロイド薬が予後を改善する原理
細菌性髄膜炎の治療時にステロイド薬を併用すると予後が改善する原理については,わが国の『細菌性髄膜炎の診療ガイドライン』1)のなかでまとめられている。細菌性髄膜炎は,くも膜と脳軟膜に囲まれたくも膜下腔に細菌性の炎症が生じたものである。細菌成分のエンドトキシン,タイコ酸,ペプチドグリカンなどが,腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)-αやインターロイキン(interleukin:IL)-1などの炎症性サイトカインを誘導し,これがIL-6や血小板活性化因子(platelet activating factor:PAF)などを活性化し,サイトカインカスケードやアラキドン酸カスケードを介して,白血球の活性化,血管内皮細胞の障害,凝固系の活性化をもたらす。このような,さまざまな炎症の過程が脳実質や脳血管に波及すると,脳浮腫,頭蓋内圧亢進,脳血流障害,脳血管炎,神経細胞障害などを引き起こし,これらによって後遺障害や死亡などの転帰不良をもたらす。ステロイド薬は炎症性サイトカイン,プロスタグランジン,PAFなどの産生を抑制することによりこれらの炎症の過程を軽減し,後遺障害が減少すると考えられている。

2.ステロイド薬が予後を悪化させる可能性について
同ガイドラインのなかでもステロイド薬導入の可否について留意するべき事項を挙げている。
①重篤な敗血症を基盤に発症してきている髄膜炎,②すでに抗菌薬が開始されている症例,③適切な抗菌薬が投与されていない症例,に注意が必要であるとしている。
グラム陰性桿菌の敗血症や菌血症では抗菌薬投与時に大量にエンドトキシンが放出され,ショックに陥ることがある。そのような状態にならないためにステロイド薬をあらかじめ投与しておこうという意図で投与するならば,すでに大量のトキシンや菌体成分に曝露された重篤な状態や,抗菌薬が投与されている状態ではステロイド薬を投与する意義が相当程度薄れることになる。また,現時点では耐性度が高いために抗菌薬の効果が全く期待できないほどの耐性菌による髄膜炎はきわめてまれである。しかし,そのような細菌による髄膜炎がいつ増加してくるかわからない。高度耐性菌による感染時にステロイド薬を投与したために悪化することはないか想定しておくことは重要な課題である。髄膜炎患者では血糖調節異常や凝固異常がしばしば認められるが,ステロイド薬はこれらの異常を,理論的には助長し予後を悪化させる可能性がある。そのため,髄膜炎に対してステロイド薬を投与することに反対の意見もある。


Neisseria meningitidis が髄液又は血液などの無菌部位から検出された侵襲性髄膜炎菌感染症として、2013年4月1日より髄膜炎菌性髄膜炎から変更となっている(全数報告対象:5類感染症)。2015年5月21日より、緊急対応が必要な疾患の特性により、診断した医師は氏名・住所等を含めた届出を最寄りの保健所に直ちに行うように変更された。
届出基準は

デキサメタゾン投与も開始」 ↓ 「そのうえで髄液検査を行おう ..


病原体(原因菌)は多種類あるが、年齢や基礎疾患によって次のように特徴がある。
・新生児〜生後3カ月乳児:B群レンサ球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌
・生後3 カ月以降の乳児〜幼児:インフルエンザ菌(ほとんどがHib )、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌
・年長児〜青年期:肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌
・成人:肺炎球菌、髄膜炎菌
・高齢者(50 歳以上):肺炎球菌、グラム陰性桿菌、リステリア菌
また、免疫能低下の状態では肺炎球菌、緑膿菌などのグラム陰性桿菌、リステリア菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)などがみられ、脳室シャント後であれば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などが多くみられる。
感染経路は多くの場合飛沫感染であり、原因菌が上気道あるいは呼吸器感染病巣を経由して侵入し、血行性に髄膜に到達する。新生児のB群レンサ球菌感染症 の場合には、産道感染も考えられている。その他に、リステリア菌が腸管から侵入したり、粘膜や皮膚に付着している黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が、カ テーテルを介して血行性に髄膜に到達することもある。



第一選択薬はペニシリンGで ある。また、一般に髄膜炎の初期治療に用いられるセフォタキ シム(CTX)、セフトリアキソン(CTRX)、セフロキシム(CXM)は髄膜炎菌にも優れた抗菌力を発 揮するので、菌の検査結果を待たずしてCTX、CTRXをペニシリンGと併用すれば、起炎菌に対して広範囲な効果を現わし、早期治療の助けとなる。
予防としてはまずワクチンが挙げられる。現在ではA、C単独もしくはその2群、およびA、C、Y、W-135の4群混合の精製莢膜多糖体 ワクチンが使用されている。しかし、2歳以下の幼児に は最初から効果が期待できず、さらに成人に対しての効果は数年程度しか持続しないとされている。最近では、C群髄膜炎菌の莢膜多糖体を不活化ジフテリアト キシンに結合させた混合ワクチンが開発され、英国では1999年11月から、その他、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ポルトガル、 スペイン、カナダなどの先進国で認可され、現時点では最も有効なC群髄膜炎菌ワクチンとして使用されている13)。一方、B群の 精 製莢膜多糖体ワクチンは免疫惹起力が非常に弱く、ワクチンとして有効でないとされている。そこで外膜タンパクを用いたワクチンが開発、 検討されてきたが、防御効果の有無がはっきりしないため、現時点においては使用可能なB群髄 膜炎菌用のワクチンは存在しない。しかし、B群髄膜炎菌による小規模なアウトブレイクに悩まさ れ続けてきたニュージーランドでは2004年に、ニュージーランド専用に開発された外膜タンパク質ワクチン「MeNZB」を仮認可し、6週歳から19歳ま での小児に定期接種を開始した14)。わが国 において少ないながらも発生する髄膜炎菌性髄膜炎の起炎菌の半数以上はB群によるものであり、日本国内のドミナント血清群であると推測されることから、今 後のB群髄膜炎菌に対するワク チンの実績動向と開発が注目される。
わが国においては、2015年5月より髄膜炎菌(血清型A、C、Y、W)による侵襲性髄膜炎菌感染症を予防する目的の4価髄膜炎菌ワクチンが認可された。基本的には任意接種だが、指定難病である発作性夜間ヘモグロビン尿症に用いるエクリズマブ投与対象者は保険適用である。
患者と接した人々への緊急の対策としては、抗菌薬の予防投与がリファンピシンを中心に行われる。

炎症性疾患の対症療法で点眼が不適当又は不十分な場合(眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、虹彩毛様体炎)、眼科領域の術後炎症

細菌性髄膜炎の約8割は、ヒブと肺炎球菌が原因で起こります。どちらの菌でかかるかはわかりませんので、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチン(またはヒブワクチン)と小児用肺炎球菌ワクチンで予防することが大切です。これら2つのワクチンは同時接種で受けることをおすすめします。

細菌性髄膜炎にかかると高い割合で重症化してしまいますので、一番かかりたくない、かからせたくない病気のひとつです。劇症型と呼ばれるものは、熱が出てから1日で死亡することもあります。現在の最善の治療をしても、死亡する人がヒブでは約3~5%、肺炎球菌で約7~10%います。
後遺症としては、脳が壊される脳梗塞や脳萎縮、髄液が増える水頭症など多くのことがあり、これらのことで知能や運動の障害が起こります。また耳が聞こえない難聴などになります。ヒブによる髄膜炎の場合、これらの脳の後遺症が約20%あります。肺炎球菌による髄膜炎の場合、脳の後遺症が20~30%程度あります。また、一見後遺症がないように見えたお子さんの経過を見ると、年長になってだんだん知能障害がはっきりしてくることもあります。
髄膜炎菌性髄膜炎は、ほかの細菌による髄膜炎と比べて、症状が急激に進行することが特徴です。発症後2日以内に5~10%が死亡すると言われています。いったん発症してしまったら救命するのも困難です。


細菌性髄膜炎の初期対応と重要性. #1. 細菌性髄膜炎ERでの初期対応 デキレジは“こう動く”. #2.

髄膜炎の原因であるヒブや肺炎球菌などの細菌は、入院して抗菌薬(抗生物質)で治療します。しかし、最善の治療をしても、薬の効果がない菌(耐性菌)が増えているために、死亡や脳障害などの後遺症が残ってしまうことも多くあります。

[PDF] 抗菌薬選択に難渋した Listeria monocytogenes 髄膜炎の 1 例



髄液、血液から分離培養を行い、グラム染色による検鏡及び生化学的性状により髄膜炎菌であることを確定する。血清群型別は、Wellcome社、E.Y Lab社などで販売されている型別用の 抗血清を用いて、凝集反応の有無によって検査を行う。
PCRによる髄膜炎菌の同定はいくつかの論文で報告されているが、いまのところWHOを含めた国際医療機関において統一された方法の提示はない。
また、髄液中の細菌抗原を検出する方法も行われており、ラテックス凝集法による診断キットがSlidex(Bio-Merieux社)として販売されている。ただし、このキットにはA, B, C群に対する抗体し か含まれていないので、その点に留意する必要がある。

細菌性髄膜炎 Bacterial meningitis(髄膜炎菌、肺炎球菌




気道を介してまず血中に入り、 1)菌血症(敗血症)を起こし、高熱や皮膚、粘膜における出血 斑、関節炎等の症状が現れる。引き続いて 2)髄膜炎に発展し、頭痛、吐き気、精神症状、発疹、項部硬直などの主症状を呈する。3)劇症型の場合には突然発症し、頭痛、高熱、けいれん、意識障害を 呈し、DIC(汎発性血管内凝固症候群)を伴い、ショックに陥って死に至る (Waterhouse-Friderichsen症候群)。
菌血症で症状が回復し、髄膜炎を起こさない場合もあるが、髄膜炎を起こした場合、治療を 行わないと致死率はほぼ100%に達する。抗菌薬が比較的有効に効力を発揮するので、早期に 適切な治療を施せば治癒する。

髄膜炎菌性髄膜炎(Meningococcal infection)

本菌はくしゃみなどによる飛沫感染により伝播し、気道を介して血中に入り、さらには髄液にまで侵入することにより、敗血症や髄膜炎を起こす。
髄膜炎菌は莢膜多糖体の種類によって少なくとも13種類(A, B, C, D, X, Y, Z, E, W-135, H, I ,K, L)のserogroup(血清型)に分類されているが、起炎菌として分離されるものではA, B, C, Y, W-135が多く、特にA, B, Cが全体の90%以上を占める。また、菌の成育に必須の遺伝子(house keeping gene)の塩基配列の多様性を比較、解析することにより、分子レベルで分類するMLST(Multi Locus Sequence Typing)と呼ばれる方法があり、流行を起こす起炎菌は特定のグループに分類されることが推測されている12)

デキサメタゾンを投与されている患者はバンコマイシンの髄液への移行性が低下し ..

起 炎菌としては、アフリカではA群が圧倒的に多く、8〜12年周期で地域での起炎菌となっており、またアジア(ベトナム、ネパール、モン ゴル)、ブラジルでも流行の原因株となっている。B群はヨーロッパに最も広く認められ、C群は米国、ヨーロッパに多く見られる。1998年にはイングラン ドでC群による流行性髄膜炎が発生し、1,500人以上が発症して150人が死亡し4)、C群混合ワクチン導入のきっかけとなった(治療・予防の項参照)。2000年から2001年にかけては、メッカへの巡礼者を介したW-135群の感染例が発生し、WHOの報告によると世界で患者約400人、死亡者約80人の犠牲者を出したとされている5)。近年においては2005年1月に、1カ月間で中国・安徽省を中心に髄膜炎の感染者が続出し、患者258人、死者16人もの犠牲者が出たとされた6)。また、フィリピンでは2004年10月から2005年1月にかけて、髄膜炎菌による患者98人、死者32人7)、インドでは2005年3月下旬から5月下旬までの短期間に、髄膜炎菌による患者が368人で死者が37人も発生した8)との報告がある。
一般的に患者としては、生後6カ月から2年の幼児、及び青年が多い。
一般的に髄膜炎菌は患者のみならず、健常者の鼻咽頭からも分離され、その割合は世界では5〜20%程度とされている9)。しかし近年の研究結果から、わが国においては健康保菌者は約0.4%程度であることが明らかとなっている10)11)。わが国における低保菌率と髄膜炎菌性感染症の低発生率の関連性は非常に興味深いが、詳細は不明である。

基本的には,抗菌薬の投与の 10〜20 分前に,デキサメタゾンを 0.15mg/kg・6 時間毎(体重 60kg の場合,デキサメタゾン

日本で細菌性髄膜炎の原因となる主な菌は、ヒブ(1種類)と肺炎球菌(90種類以上の型がある)です。これらの菌は、ふだんは鼻やのどの奥にいて、普通は症状を出しません。保育所など小さな子どもが集団生活をする場では、ヒブや肺炎球菌の検査をすると、子どもたちの鼻などから良く見つかります。これは、そばにいる子どもや家族と、咳やくしゃみなどを通じて、菌の移し合いをしているからです。その結果、元気な子どもでもこれらの菌が血液の中に入り込むことがあり、そのまた一部の子どもでは体のあちこちに菌が着いて炎症を起こします。脳を包む膜(髄膜)に入り込むと細菌性髄膜炎を引き起こします。

デキサメタゾンを投与されている患者はバンコマイシンの髄液への移行性が低下し,予後が

元気な子どもでも、ふだんは鼻やのどにいる細菌が血液の中に入ることがあり、その菌が脳を包む髄膜について炎症を起こす病気です。そして最終的には脳そのものなどに病気を起こします。
細菌性髄膜炎(昔は脳膜炎と言いました)を予防するワクチンが導入される前の日本では、年間約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎にかかっていました。そのうち、ヒブによる髄膜炎に年間約600人、肺炎球菌による髄膜炎に約200人がかかり、2つの菌による髄膜炎で亡くなる子どもは50人近くにもなります。
また、発症が10代後半に多い髄膜炎菌による髄膜炎(髄膜炎菌感染症)もあります。

小児の初発感染,加齢や栄養失調に伴う免疫不全,もしくはHIVや

まず,ステロイド薬を重症の敗血症および敗血症性ショックに使用した場合のメタアナリシスでは重症化を招く傾向があると報告がなされていた2)。しかし,その後のメタアナリシスにおいては,敗血症または敗血症性ショックにおいても少量のステロイド薬は少なくとも悪い影響はなく,特に副腎不全を伴う症例においては有益であるとの報告がなされている3)4)。
前述したような理論的背景から,細菌性髄膜炎に対してステロイド薬を投与したランダム化比較試験がなされ,よい効果が認められたとする報告が相次いだ。初期の論文を紹介すると,明らかに難聴の発生率が減少したとするLebel 5)らの報告がある(表1)。

悪性腫瘍に伴う免疫不全である5, 6).HIV感染症が広がる以前は,

しかし、世界全体としては毎年30万人の患者が発生し、3万人の死亡例が出ている3)。特に、髄膜炎ベルト(meningitis belt)とよばれるアフリカ中央部において発生が多く、また先進国においても局地的な小流行が見られている。

発熱・嘔吐を主訴に来院した重篤な既往歴のない60歳代女性(2/3)

感染症法が施行された1999年以降では8〜22例が報告されている 1)。わが国では、髄膜炎菌性感染症の起炎菌としては、BおよびY群髄膜炎菌が同定されることが多い1)2)

CTRX 2g q12h, VCM 700mg q8h, ABPC 2g q4hを開始

化膿性髄膜炎のうち、髄膜炎菌を起炎菌とするものを髄膜炎菌性髄膜炎という。髄膜炎を起こす病原性細菌はいくつか知られているが、大規模な流行性の髄膜炎の起炎菌は髄膜炎菌のみであることから、流行性髄膜炎ともよばれる。